データをもとに考える電源構成の再構築

中国のCO2排出量はどこまで増加するか

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福島第一原発の事故を契機とした、電源構成の見直しに係わる情報を下記に掲載しており、このページもその一つです。       データをもとに考える日本の電源構成の再構築


        中国のCO2排出量はどこまで増加するか
(2013年1月5日)

注意:下記のうち、米EIAのデータについては、データベースの値が見直し、修正されていることが分かりました。また、2011年と2012年のCO2排出量の推定値も正確さ欠けるものです。下記レポートの7章に改正版を記載しました。(2014年11月)


  世界のCO2排出量の約1/4は中国が排出しています。燃料の燃焼に由来する中国のCO2排出量の増加を、国際エネルギー機関(IEA)のデータベースで調べてみました。なお、以下に示すGDPや人口データは、世界銀行のデータベースの値を用いています。

CO2排出量の実績
  図-1に中国のCO2排出量の推移を、米国、日本、ドイツ、インドと対比して示しました。米国は中国に次ぐ世界第二の排出国、日本とドイツは省エネが進んだ国、インドは今後の経済成長によりCO2排出量でも中国に追従する国と考えられています。中国は2002年頃から、急速にCO2排出量を増やしています。



  中国はGDPで日本を抜き世界第二位になりましたが、図-2に示すように、一人当たりでは日本などの先進国の10分の一程度です。まだまだ経済成長を続け、CO2排出量を増加させると考えられ脅威です。


  中国の一人当たりのCO2排出量は、図-3に示すように、日本やドイツの半分程度ですから、経済成長を犠牲にして省エネ投資などを行い、CO2の排出抑制に努めることは期待できないでしょう。



  ただし、13億人の経済成長に必要なエネルギーの確保は大きな問題となっています。エネルギー消費を抑制する政策が実施されており、2010年のGDP当たりのエネルギー消費量を2005年より約20%削減する目標で、エネルギー効率の向上が図られました。

  図-4、図-5には、GDP当たりのCO2排出量の推移を示しました。前者は国内通貨によるGDPを各年の為替レートでUSドルに変換したGDP(current US$)を用いており、後者は国内通貨によるGDPを2000年のUSドルに変換したGDP(constant 2000 US$)を用いています。
  インフレ分を除く実質GDPを用いた図-5でも、2010年の中国のGDP当たりのCO2排出量は、2005年より17%くらい減少しています。

  1990年代からの推移をみると、GDP当たりのCO2排出量は大幅に低下しています。しかし、日本やドイツと比べると、まだずい分高いレベルです。
  今後の中国のCO2排出量は、どこまで豊かになってGDPが増加し、どこまでエネルギー効率が向上してGDP当たりのCO2排出量が低減するかにかかっています。





CO2データの信頼性
  本題に入る前に、中国のCO2排出量の実績について見ておきましょう。中国政府が公表するGDPなどの経済指標には疑念が持たれています。エネルギー・環境データについても、例外ではないと思われます。
  中国は人口の総数も疑われる大国ですから、統計データに誤差があることは想像できます。中国全体の統計は、30余りの地方政府の統計を集計したものです。地方政府が中央に対し、良いデータを報告したいと考えることは想像に難くありません。中央政府にも、国際社会に対し好ましい情報を発信したいという思惑が働きます。
  加えて、CO2排出量に関しては、国内で採鉱される石炭の消費データの信頼性が乏しいことも指摘されています。

  図-6には、中国の燃料燃焼由来のCO2排出実績に関するIEAと米国エネルギー情報局(米EIA)のデータを対比しました。概ね同じようなグラフになっていますが、両者の差を黄色のグラフで示しました。日本のCO2排出量を併記しましたが、2010年の両者の差は、日本の総排出量と同等です。
  中国のCO2排出量の実績データの信頼性については、地方政府が報告しているエネルギー消費量から積算したCO2排出量と、中央政府の報告値にかなりの違いがあることが、環境誌のレポート*にも報告されています。
  * Nature Climate Change(2012) 2,672–675(2012), "The gigatonne gap in China's carbon dioxide    inventories"


CO2排出量の予測
   世界のエネルギー予測で権威があるのは、IEAが毎年発行しているWorld Energy Outlook (WEO)だと思います。450シナリオ、新政策シナリオ、現状政策シナリオの3シナリオに基づくエネルギー消費と、それに関わるCO2排出量の予測が掲載されています。

  地球温暖化防止のためには、2050年までにCO2排出量を現在のレベルから半減させ、気温上昇を2℃に留め、大気中の温室効果ガス濃度を450ppm程度に安定化させることが必要との考えが支配的でますが、450シナリオはそれに対応したものです。ただし、450シナリオの実現は、ほとんど困難と考えられています。

  各国が実施している政策に基づく現状政策シナリオに対し、新政策シナリオは、各国が発表した公約や計画を考慮したものです。それが本当に実施されるかは不確かですから、新政策シナリオは努力目標と言えるでしょう。
  図-7に、無償でダウンロードできる2010年版WEOの3シナリオによる、2035年までの世界と中国のCO2排出量の予測を示しました。2011年版、2012年版で修正されているかは確認していません。

  
  米国エネルギー情報局も、毎年International Energy Outlookを発行しており、その2011年版(IEO2011)には、2035年までのエネルギー消費とCO2排出量の予測が記載されています。基準ケースは、各国の既存の法律や政策に基づくもので、IEAの現状政策シナリオに対応するものです。

  図-8には中国のCO2排出量について、2010年までの実績とともに、2035年までのIEAの現状政策シナリオと新政策シナリオ、米EIAのIEO2011の基準ケースの予測を示しました。
  いずれの予測グラフも、2010年までの実績グラフのと比べて、CO2排出量の増加の傾きが低くなって います。また、新政策シナリオでは、2035年のCO2排出量は100億トンを少し超える程度と予測しています。
  中国は2009年に、2020年のGDP当たりのCO2排出量を2005年に比較して40~45%削減する目標を打ち出しており、それを反映したものと思われます。また、発展途上国とはいえ最大のCO2排出国の中国に対し、CO2の増加を抑制してほしいという希望が込められているのかもしれません。

  予測と比較するため、2011、2012年の中国のCO2排出実績データを探してみました。2011年の実績としては、下記レポート*に97億トンという報告がありました。
  *Trends in global CO2 emissions 2012 Report, PBL Netherlands Environmental Assessment Agency
  2012年の値は、概略の推定値になると思いますが、世界全体で356億トンというGlobal Carbon Projectのメンバーによる報告*が見られます。同報告には、2011年の中国の排出量は世界全体の28%とありますが、2012年の比率については言及していないようです。
  
* Nature Climate Change, Published online 02 December 2012, "The challenge to keep global warming below 2 °C"

  中国のCO2排出量と世界全体との比率の推移を、前述のIEAと米国EIAのデータベースで調べてみました。図-9に示すように、2000年頃までは13%前後でしたが、その後、25%前後までほぼ直線的に増加しています。世界で排出されるCO2の1/3は中国のものと言われるのも、そう遠くないように思われます。2012年も恐らく増加したものと想像されますが、2011年と同じ28%と控えめに評価してみました。
  過去2年の推定実績を、図-8に水色の短い線で示しました。データの信頼性の問題もあり、少し変な線になっていますが、従来の排出実績の延長線上で、IEA予測のような排出抑制傾向はまだ見られないように思います。今後の推移を見る必要があるでしょう。





  将来のことは基本的に不確かですから、筆者の仮定による一例だけを表-1に示しました。2035年には、中国は豊かになり、一人当たりのGDPが今の日本の半分程度になるとします。また、エネルギー効率が向上し、GDP当たりのCO2排出量が今の日本の2倍くらいに低減するとします。その場合には、CO2排出量は現在の約2倍になり、一人当たりのCO2排出量は現在の日本と同水準になります。


日本の対応
  最後に、地球温暖化防止に関し、日本は何を重点に取り組むべきか、筆者の考えを記載します。

  
2009年8月の衆議院選で政権に就いた民主党鳩山内閣は、産業界などの懸念をよそに、選挙のマニフェストに従い、25%の温室効果ガス削減目標を内外に公表しました。意欲的な目標を掲げることで、国際的にリーダシップを発揮すると報じられましたが、何も実行されなかったように思います。加えて、25%の削減には積算根拠が無く、急遽検討されたものは、2030年までに原発を14基以上新増設し、電力量の53%を原子力で賄うことを盛り込んだ計画です。エネルギー基本計画として閣議決定したのは、今や原発ゼロを唱えている菅首相の内閣です。エネルギー問題を真面目に扱って欲しいものです。

  CO2を増加させるのは、中国だけではありません。インドもブラジルもインドネシアも、今後もっと豊かになり、CO2排出量を増加させます。豊かになることは発展途上国の権利ですから、エネルギー効率を高め、GDP当たりのCO2排出量を低減することが極めて重要になります。

  一方、日本のCO2排出量は世界全体の約4%です。例えば、耐震性が不十分な家は補強して太陽光発電を設置することまで言及されています。そのような限界的努力をしても、追加的に削減できる量は、発展途上国による増加分に比べて僅かです。自国のCO2排出量を削減することは重要ですが、それは他の先進国並みの経済負担に留めるべきです。

  日本が行える有効な地球温暖化対策は、保有する高効率・省エネ技術を世界に広めることです。無償であれ有償であれ、それらの技術を世界に広めることは、CO2増加の抑制に遥かに役立ちます。その種の技術としては、例えば、高効率石炭火力発電、製鉄プラントの省エネ技術、ハイブリッド自動車、省エネ型のエアコンや冷蔵庫など、石油危機以来30年以上に亘って日本が培ってきた技術です。世界のエネルギー需給を考えれば、原発は世界で必要とされており、高い信頼性を有する原発の技術も含まれると思います。

  地球温暖化防止のためには、先進国が発展途上国を支援することは不可欠でしょう。ただし、技術は貴重な財産です。優れた高効率技術を持たない他の先進国の資金負担のもとで、日本はそれらの技術を発展途上国に提供すべきだと思います。


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