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中国GDP値の疑念と代替指標を用いた推測
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            中国のGDP値に対する疑念と
          代替指標を用いたGDP値推測の試み
(2015年7月 )

中国の経済成長の減速は誰の目にも明らかとなりましたが、それが、高度成長から安定成長への移行を示すものか、深刻な経済状態への序章であるかは意見が分かれるところです。それに関連してこのページは、中国経済の専門家が抱いている、中国のGDP値に対する疑念の定量化を試みたものです。

疑念
 中国政府が発表するGDPなどの経済指標には疑念が持たれているようです。電力量や鉱工業生産量などの変動に比べ、景気後退時のGDP成長率の落ち込みが小さいことがその理由です。GDP成長率の低下を、控えめに発表しているのではないかという疑念です。

図-1には、一例として、中国のGDPと発電電力量の対前年同期比の増加率の推移を示しました。GDPは年間と四半期のデータ、電力量は毎月のデータを示しています。電力量の変動に比べて、GDPの変動が小さいことが分かると思います。
   

GDP値との相関
 GDP値をチェックする方法として、代替指標との比較があります。経済状態の変化に応じGDPと類似の変動をする項目で、データの信頼が高いものが代替指標に用いられます。図-1のように、両者の変動を比較し、相互に矛盾が無いかをチェックするものです。

このレポートでは、代替指標として発電電力量、総エネルギー消費量、総一次エネルギー供給量、鉄道貨物輸送量、総貨物輸送量、鉱工業生産量を用い、定量的な検討を試みました。

例えば、過去7~8年のGDPと発電電力量のデータの間には、景気後退が著しいリーマン・ショックの2008、2009年や胡錦濤体制の最後の2012年などを除くと、直線的な相関関係が認められます。図-2は、横軸に発電電力量、縦軸にGDPをとり、4年分の年間データをプロットしたものです。高い相関性で直線に乗っていることが分かります。グラフ中に示した数式は、最小2乗法により係数を定めた近似直線の式です。
   

GDP値の推測
 中国のGDPの発表値は、景気後退が著しい年を除けば、妥当なものであると仮定します。上述のように求めたGDPとの相関関係と、代替指標のデータから、この仮定に基づくGDPの推測値を求めることができます。

 GDPとの相関式代替指標データ → GDP推測値

図-3はそれを図示したもので、相関式を表す赤の直線と、それより上に位置する2009年のデータ点について、GDPの発表値と上述の推測値を示したものです。相関式を表す赤線で、2009年の発電電力量でのGDP値が推測値になります。
   


推測結果
 -4は、発電電力量と鉱工業生産量を代替指標に用い、上述の方法で、GDPの推測値を求め、GDPの発表値とともに図示したものです。
  
    
 GDPの発表値と推測値の差異は、最大で数%と微妙ですが、発表値と推測値が異なっていることが分かると思います。

図-5は、発電電力量と鉱工業生産量から求めたGDPの推測値の平均値について、対前年比の成長率を求め、発表値と比較したものです。このグラフからは、発表値と推測値の違いが明瞭に分かります。 
   

 図-5は、発電電力量や鉱工業生産量の変動から考えると、GDPの成長率は推測値くらいに見える、ことを示すものです。リーマン・ショックの2008年、2009年、胡錦濤体制の最後の2012年、そして2014年のGDP成長率の推測値は、発表値よりも低くなっています。
 リーマン・ショックは過去のことですが、2014年のGDP成長率は、現在の中国経済を考える上で重要なデータです。中国の統計データに、1~2%の精度を期待するのは見当違いであるような気もしますが、一方で、GDP成長率が0.3%程度低下したといって、マスコミに大きく報じられているのも実態です。


 諸外国が、中国を輸出市場として見る場合には、経済成長がなくても既に充分大きな市場です。一方、中国自身にとって、1人当たりのGDPは未だ日本の5分の一程度に過ぎず、貧富の差が大きいことに加え、多くの問題を内包しています。中国社会を維持するためには、経済成長が不可欠でしょう。中国経済を観察する上で重要なことは、GDP成長率が僅かに低下したことではなく、その低下が今後安定成長に繋がるものか、深刻な経済状態への序章であるかを見極めることだと思います。


 詳しくは下記レポートをご覧下さい。
  中国のGDP値に対する疑念と代替指標を用いたGDP値推測の試み
   
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