注目事項のビジネス情報
中国経済の減速とサービス産業の拡大
トップページ注目ビジネス情報中国経済の減速とサービス産業の拡大

         
           中国経済の減速とサービス産業の拡大
(2015年10月)


 中国経済の減速が、世界経済に大きな影響を及ぼしています。中国の株価指数「上海総合」の急落を契機とした経済変動について、中国経済で何が起きているのかに関心が持たれています。中国経済の高度成長が終焉し、安定成長への構造転換が図られているためであるという説明は説得力あるように思われます。安定成長への構造転換とは、投資と輸出主導の経済から、消費と内需主導の経済への転換です。

GDPと鉱工業生産
 図-1には、中国のGDPと鉱工業生産量の対前年同期比の増加率を示しました。2008年から2009年の急激な落ち込みは、リーマン・ショックによるものです。その後、4兆人民元と言われる大規模な景気対策により、中国経済はV字回復を遂げます。2010年半ば頃には、景気の過熱も収まり、以後、中国経済の成長率は低下を続けました。
 図-1に示されるように、GDP成長率の低下は緩やかですが、鉱工業生産の増加率の低下は顕著です。鉱工業生産量の増加率は、リーマン・ショック以前には17%前後でしたが、2011年には14%、2013年には10%弱へと低下し、2015年には6%前後となりました。

 このデータは、鉱工業生産の増加率の低下を、サービス産業(第三次産業)の成長が補っていることを示していると思います。鉱工業生産の増加率の低下については、筆者のウェブページ「中国の鉱工業生産の推移、68品目の10年間」で詳しいデータを紹介しました。このページでは、中国のGDPに対する第三次産業の寄与のデータを紹介します。



GDPの内訳
 図-2には、中国GDPの推移を内訳付きで示しました。グラフの下側から、第一次産業、鉱工業と建設業が第二次産業、残りの項目が第三次産業の内訳です。

 2009-2012年のデータは中国国家統計局のChina Statistical yearbook 2014に掲載されていた値です。また、2013-2014年のデータは、国家統計局のウェブのStatistical dataのQuarterly Dataの第4四半期の累積データです。後者には、グラフ上部9項目の合計値しか示されていないため、それを表示しました。それら9項目の2012年と2013年の間の部分のグラフは、Excelの標準グラフではうまく表示できないため、灰色のマスキングをしてあります。GDP成長率などは実質GDP値によるものですが、以下のデータは名目GDP(current prices)であることに注意して下さい。
 中国の経済指標には疑念が持たれています。加えて、工業生産量などの統計データに比べ、サービス産業のデータの信頼性は劣ると考えられているようですが、国家統計局の発表値をそのまま紹介しました。

 GDPのほとんど全ての内訳項目は、毎年増加しています。注意して見ると、2011年のところでグラフが折れ曲がっているのが分かると思います。横軸の年の上の値が、その年のデータを表示しており、2011年のところでグラフが曲がっているのは、2012年の値の増加が少なかったためです。具体的には、2012年の鉱工業生産の増加率が、それ以前より低かったためです。図-1にも、そのことは示されています。

 鉱工業生産の増加は、2012年以降かなり鈍化していますが、そのグラフの上側に表示されている三次産業が拡大しているため、GDP全体では成長率の鈍化は抑制されているわけです。
   

三次産業の寄与
 図-3には、同じデータの三次産業だけを示しました。各内訳項目は、ほぼ直線的に増加していることが分かります。量的にも増加率でも大きい内訳項目は、卸売・小売取引や金融仲介です。金融仲介は、注意して見ると、2013年に増加率が上昇していることが分かります。
   

 図-4には、中国GDPに対する一次、二次、三次産業の寄与率を示しました。一次産業は約10%でほぼ横ばいです。
 一方、2012年以降、二次産業の比率は少しずつ低下し、三次産業の比率が上昇しています。2013年には、三次産業の比率が二次産業を上回っています。これは、高度経済成長から安定成長への中国経済の構造転換を反映したものと思います。

 図-5には、主要国のGDPに対する各産業の寄与率を示しました。GDP上位20ヵ国のデータです。世界銀行のデータで、その記載のまま農業、工業、サービス産業という表示を用いました。先進国の工業の比率は20%程度で、サービス産業の比率は70%前後に達しています。
 中国が今後も安定経済成長を続けるなら、その過程で二次産業の比率は更に低下し、三次産業の比率が上昇するでしょう。















 中国経済は三次産業の拡大により、GDP成長率の鈍化はある程度抑制されています。しかし、鉱工業生産の増加率の低下は確かなことと思われ、それは、中国への輸出国や進出企業、そして、中国自身にかなりの影響を及ぼすものと思われます。


 注意)投資や業務等の目的から、本ウェブページで紹介した事項に関心を持つ方は、中国国家統計局などのウェブサイトにアクセスし、ご自身で統計データを確認し、判断して下さい。上述の文章・情報により被ったいかなる被害に対しても、当方は一切責任を負いません。