コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック
(3) 日本のコロナ対策
(2020年6月5日)

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 新型コロナウイルスは、世界に多大な被害をもたらしました。被害がどこまで拡大するか見当が付きません。これだけの大問題ですから、今後詳しい検証が行われることでしょう。しかし、記憶が確かなうちに、問題を整理しておくことが重要と考えます。

 (1)中国の対応、(2)WHOの対応とともに、(3)項では日本のコロナ対策について紹介しました。




(3) 日本のコロナ対策の経緯
 この問題に関心を持っている方なら、日本のコロナ対策についてご存知でしょうから、経緯を簡単に紹介します。マスコミは、安倍政権のコロナ対策の失敗と、枕詞のように言い続けてきたと思いますが、結果から判断すれば私は成功だったと考えています。

①はじまり
 日本では1月の半ばに、早くもコロナウイルスへの感染が発生しました。武漢から来た中国人から感染したものです。この段階では、感染経路を追跡することが可能でした。また、2月に入るとクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号での大量感染問題が始まりました。但し、クルーズ船での感染は特殊な問題ですので、ここでは取り上げません。

 1月30日に新型コロナウイルス感染症対策本部が設置され、その下に2月14日に専門家会議が設置されました。日本のコロナ対策は、基本的に専門家会議の提言に沿って推進されました。安倍首相の顔が見えないという批判もありましたが、この種の問題で専門家の意見を重視するのは妥当な考えでしょう。

②ピークを遅らせ
 2月の後半に入ると感染増加の兆しが見られました。特に北海道での感染者が顕著でした。韓国に続きイタリアでの感染急増が始まっていました。今から考えると、それほど騒ぐほどの感染者数ではなかったのかもしれませんが、日本は1、2週間遅れでイタリアの感染急増に追従するのではないかという危惧がありました。

 専門家会議は2月24日、「これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と警告を発し、感染のピークを遅らすべきという見解が示されました。急激な感染増加を防ぎ、ピークを抑制するとともに遅らすもので、その間に医療体制を整備することが目的です。具体的には、海外からの感染者の入国を防ぐとともに、感染の大量発生に繋がる機会を減らすものです。

 専門家会議の見解をもとに、翌25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」が出されました。感染者の集団発生を防ぐクラスター対策が注目され、クラスター対策班も設置されました。

 26日には安倍首相からイベントなどの中止・延期要請が出され、翌27日には全国の学校に休校要請が出されました。春休みのでの期間を想定したものでしたが、ほとんどの学校は、後に発表された緊急事態宣言が解除されるまで休校が続くことになりました。

 その後の感染者数の推移を見れば、感染のピークを遅らせる方針は十分に達成されたことが分かります。それにより日本は、欧米とは違った特異な感染者数の増加特性を歩むことになりました。

③クラスター対策
 2月28日には、北海道での大量感染に対応するため、北海道知事の権限による「新型コロナウイルス緊急事態宣言」が出され、また、クラスター対策班による調査が行われました。クラスター対策は、感染者の大量発生経路を追跡して、感染者の増加を防ぐものです。北海道での感染増加は、札幌雪祭りなどに訪れた中国の人が契機になったものと思われます。

 クラスター対策は、その後、大阪のライブハウスなど、全国の集団感染事象に適用され、有効に機能したと考えます。

④ 3密を避ける
 3月9日専門家会議は「本日時点での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえている」と見解を示しました。その上で、これまで集団感染が確認された場に共通するのは、①換気の悪い密閉空間、②多くの人が密集していた、③近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという 3 つの条件が同時に重なった場です。クラスター発生のリスクを下げるため、3密を避けることが求められるようになりました。

 1日の新規感染者数は、3月下旬までほとんど50-60人以下で推移していました。

⑤自粛要請
 しかし、3月末頃から感染者の急増が始まりました。欧米でのコロナウイルスの流行により、海外からの帰国者と欧米からの訪日者がもたらしたウイルスが、3月後半の3連休で広がったと考えられています。イベントの自粛要請が続く中、2月末頃から少数ですが、大規模ライブやイベントも開催されました。

 3月25日には都知事が重大局面にあるとして、夜間・休日の外出自粛などを都民に要請しました。3月28日には安倍首相は記者会見で、自治体などによる外出自粛要請に応じるよう国民に呼び掛けるとともに、自治体との緊密な連携の下、最悪の事態を想定しながら、感染拡大の防止に全力を尽くすと語りました。

⑥緊急事態宣言
 緊急事態宣言を求める声が増加する中で、政府は慎重な姿勢を取り続けましたが、4月7日に緊急事態宣言が出されました。東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象にゴールデンウイークが終わる5月6日までを対象としたものです。都道府県知事は、外出自粛、学校の休校、施設や店舗の使用制限の要請や、イベント中止の指示などが行えるようになりました。4月16日には緊急事態宣言は全国に拡大されました。

 専門家の試算では、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができるということでした。効果を見定める期間を含め、ゴールデンウイーク明けの5月6日までと設定されたものでした。3密を防ぐことに加え、外出の自粛が要請されることになりました。

⑦接触機会の8割削減
 接触機会の8割削減について、私は次のように理解しています。

 感染者が少ないうちは、クラスター対策が有効に機能していました。しかし、感染経路が不明の感染者が増加しました。それは市中に多くの感染者がいること示しています。重篤な感染者は病院に掛かるので、その存在はだいたい把握されているはずです。従って、軽症者や無症状の見えない感染者が蔓延してしまったことを意味すると思います。

 軽症や無症状の見えない感染者の把握は困難です。PCR検査をすれば分かりますが、例えば1千万人にPCR検査を実施しても、国内の見えない感染者の10%しか把握できません。

 そうなると、お手上げかと言えば、そうではありません。見えない感染者がいくら増加しても、2~3週間すれば、大半の感染者は自分の免疫力でコロナウイルスを駆逐し感染者ではなくなります。問題は、その期間に他人を感染させなければいいわけです。統計的に1人が0.5人に感染させれば感染者は半分になり、2人に感染させれば感染者は2倍に増えます。

 この2~3週間に他人に感染させない対策が、接触機会を削減することです。例えば、感染者による接触機会を半分にし、感染する可能性がある一般の人の接触機会を半分にすれば、0.5×0.5 = 0.25で、感染は1/4になることになります。これは大雑把な計算ですが、北海道大学の西浦先生は、真面な数理モデルで検討し、接触機会の8割削減が必要と言っているのだと思います。

⑧医療体制の整備
 感染者の急増により医療体制の逼迫、地域によっては医療崩壊に近い状態にあることが報じられました。

 医療体制の整備については、重症の患者のための医療施設確保を中心に対策が取られたように思います。例えば、重症患者と中等症患者の入院先を明確に分けることで、重症患者用の医療施設を確保する神奈川方式などが考案されました。また、軽症状や無症状の感染者が、他人に感染させるずに療養する場所として、ホテルを借り上げて宿泊させる方式が多くの地域で実施されました。

 厚生労働省が毎日発表しているコロナウイルスの感染状況の情報によれば、入院治療を要する人数は5月の初めころにピークの12,000人近くに達し、その内無症状・軽症・中等症の患者が約5,600人でした。人工呼吸器又は集中治療室に入院している患者のピークは約330人でした。

 医療用のガウンやマスクなどの資材の不足も最後まで解決しなかったように思います。医療用資材の不足は、主たる生産地である中国の生産が停止したこともありますが、中国は武漢封鎖の直後に、自国で必要な医療資材を確保するため、輸出禁止措置をとり、中国の感染が収束した後は、それを利用したマスク外交を展開しました。

⑨ PCR検査
 多くの非難が集まった事項として、他の先進国と比べて低いPCR検査能力の問題がありました。政府はPCR検査能力の増大を約束しましたが、部分的改善程度に留まりました。PCR検査能力の増大は、設備と専門人員両面の増強が必要であり、短期にできる問題ではなかったのかもしれません。

 その結果、コロナウイルスの感染が疑われても、なかなかPCR検査を受けられず、コロナウイルス感染者としての入院治療が遅れ、亡くなられた方も出ました。

 その他、38℃台の熱と咳が1週間以上続き、インフルエンザの検査では陰性で、その旨保健所に話しても肺炎の診断を受けるように指示され、気管支炎だったため、PCR検査を行ってもらえなかったケースもありました。コロナウイルス感染が疑われたけれど、最後まで分からず仕舞いで、仕事は念のためテレワークとしたが、まだ休みになっていなかった小学生の子供の学校を休ませるか悩んだという話を聞いたことがあります。

 少なくとも、コロナウイルスの感染が疑われる人はだれでも、PCPの検査を受けられることが必要だったと思います。但し、PCR検査能力を大幅に増強し、軽症、無症状の感染者まで検出する必要があるかは疑問です。

 日本のコロナウイルスの対策は、乏しいPCR検査能力を前提に組み立てられたものです。感染の可能性が高い症状が出ている患者を中心にPCR検査を行い感染の有無を確認し、その濃厚接触者を調べ、PCR検査により感染者を探し出すものでした。

 上記のように問題はありましたが、少ないPCR能力を前提にするなら、それなりにうまくいったのではないかと考えます。

⑩緊急事態宣言の延長
 緊急事態宣言解除予定の2日前の5月4日安倍首相は、緊急事態宣言解除を5月31日まで延長することを発表しました。新規感染者はピーク時の3分の1まで減少し、1人の感染者がどれぐらいの人にうつすかを示す実効再生産数の値も1を下回っていると説明した上で、次のように述べました。

 現時点では感染者の減少が十分なレベルとは言えない。1万人近い方々がいまだ入院などにより療養中です。この1か月で人工呼吸器による治療を受ける方は3倍に増えました。医療現場の皆さんが過酷な状況に置かれている現実に変わりはありません。これまでに500名を超える方々がお亡くなりになられました。医療資源を更に重症者治療に集中していく必要があります。1日当たりの新規感染者をもっと減らさなければなりません。毎日100人を超える方々が快復しておられますが、その水準を下回るレベルまで、新規感染者を減らしていく必要があります。
 特に警戒が必要な13都道府県は、引き続き極力8割の接触回避のための協力をお願いします。

 首都圏で感染者が無くならない理由は、後に分かったことですが、ホストクラブ等が自粛要請に応えておらず、軽症・無症状のホストなどが感染を広めていたためです。そのため、首都圏の3千6百万人が、緊急事態の19日間延長に付き合わされたのですから迷惑なことです。
 しかし、コロナ担当の西村大臣も小池都知事も無策であったため、その迷惑は緊急事態解除後にも持続しました。


⑪緊急事態宣言の解除
 緊急事態宣言の延長を検討した際、5月14日を目途に緊急事態措置の実施期間を再評価することになっており、予定に従い感染の少ない39県の緊急事態宣言が解除されました。また、5月21日には大阪、京都、兵庫の3府県の緊急事態宣言も解除されました。

 残りの北海道、東京、埼玉、千葉、神奈川については、感染者数がなかなか減少しなかったのですが、5月末を待つことなく5月25日に解除されました。これ以上自粛を続けることは、経済への影響があまりに大きくなるという判断が働いたものと想像されます。

 5月28日現在、マスクを付けなくなった人が首都近郊で急速に増加しています。今後は、第2波、第3波のコロナウイルスの流行が危惧され、既に、その予兆が見られます。

 今後は、コロナウイルス感染の実効再生産数を統計的に1未満とする新たな生活様式を模索し実行することが求められると思います。

⑫日本のコロナ対策の評価
 マスコミは、どうしても日本のコロナ対策が失敗だったと言いたいのでしょう。しかし、結果から判断すれば合格点であったと私は考えています。

 「感染のピークを遅らせる」方針は、明らかに成功したと考えます。「クラスター対策」も感染が少ない段階では効果を上げました。「3密を避ける」方針は、適格であったと思います。政府のコロナ対策を批判した多くの人達が、3密を避けるような適切な対策を提案できたか疑問です。

 クラスター対策で対応できないほど市中の感染者が増加すると、3密を避ける方針に従った「イベントや外出を自粛」する方針に転換しました。

 緊急事態宣言の解除は当初予定の1ヶ月より、8日~19日遅れました。しかし、上表に示したように、欧米では都市封鎖という強硬手段がとられ、個人のプライバシーを侵す対策が取られる国もあったのに対し、日本はマイルドな自粛要請により、短い期間で緊急事態宣言を解除しました。

 コロナ対策は終わったわけではありませんが、未知のウイルスを相手に不明の点が多い中で、必ずしも正鵠を得ない多くの批判に耐えながら、日本は現時点までかなりうまくやってきたと考えます。


⑬コロナ対策に関する提案
 最後に1件だけ、今後のコロナウイルス対策に関する提案をしたいと思います。

 緊急事態宣言の外出自粛により、感染者は明確に減少しました。それが解除された後、感染者が再び増加しないことを願っています。クラスター対策の実施により、国内の毎日の感染者数が数十人以下を維持できればいいと思います。

 しかし、海外から感染者か入ってきた場合には、3月末の感染者増加と同様に、感染者の増加を抑制することは困難でしょう。一方、経済に悪影響のある入国制限をいつまでも続けているわけにはいきません。また、入国者を2週間の経過観察をするようなことでは、入国者の負担が大き過ぎます。海外からの感染者の入国を防ぐ新たな規則の創設が急がれます。合意を得て国際的な規則とすることが重要です。

 日本はG7の中で最もうまくコロナウイルス対策を実施したと思います。また、来年にはオリンピックを控え、多数の来日者が予定されています。日本は、G7を主導して感染者の入国を防ぐ国際規則創設を提案すべきと考えます。

 これまで経験から、体温測定でコロナウイルスの感染者を完全にスクリーニングできないことは明らかです。このウイルスは、潜伏期や軽症・無症状の感染者もそれなりに感染力があります。また、解熱剤を服用している人も体温測定を通り抜けてしまいます。厳密な管理が必要です。

 私の提案は、先ず出国時にPCR検査を行い陰性であることを義務付けるべきです。空港の待合室や航空機は感染の温床でしょうから、PCR検査で陰性でなければ、空港の出国待合室に入れないようにすべきです。

 更に入国時、入国審査の前に体温測定、短時間で結果が分かる抗原検査、および、再度PCR検査を行うこととし、入国後の連絡先を申告してもらいます。体温測定と抗原検査をパスすることを入国の条件とし、後日、PCR検査結果が陽性べあることが分かった場合には、入国後に連絡して隔離することにするものです。

 来年のオリンピックまでに、ワクチンと治療薬が実用化され、世界の感染者がほとんどいなくなればいいと思います。そうでないなら、上記のような規則を導入しないと、到底オリンピックは開催できないと思います。