コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック
新型コロナ:武漢封鎖/WHO初動対応/
日本の緊急事態宣言/第二波と対策
(2020年8月31日)

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新型コロナ、なぜ人から人への感染の警告が遅れたか

新刊PDF:新型コロナの発生と日本の対応

1. 原因不明の肺炎発生から武漢封鎖まで
原因不明の肺炎
 2019年12月以降、中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎が複数報告されました。

 下図は、世界5大医学誌の一つと言われるLancet医学ジャーナルの報告に掲載されたものです。恐らく、中国の医療関係者による原因不明の肺炎に関する医学誌への最初の報告と思われます。
 2020年1月2日までの症例の分析結果で、臨床検査で確認された症状発症日の分布を示し、赤は武漢華南海鮮卸売市場と接触のある人数です。


 出所:The Lancet, Vol. 395, Issue 10223, P497-506, Feb. 15, 2020

"Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China"


 武漢海鮮市場との接触ある症例が3分の2を占めるため、同市場で扱われている野生動物が感染源と疑われ、同市場は2020年1月2日に閉鎖されました。

 しかし、発症日が12月1日の最初の症例は、アルツハイマー病に苦しむ高齢者で、海鮮市場からバス停で4~5の場所に住んでおり、病気のため基本的に外出していないと語ったと報じられています。そうであるなら、この症例に感染させた人が11月中にいたはずで、また人から人への感染を裏付けることになります。

 このLancet誌のこの報告は、オンラインによる最初の公開は1月24日で、論文作成期間や、Lancet誌側での査読期間を考慮すれば、1月上旬には、論文の著者は上図データを把握していたと考えられ、人から人への感染を認識していたものと推測されます。
 新型コロナウイルスの人から人への感染がいつ分かったかは重要な問題であり、今後検証されることでしょう。

新型コロナウイルス
 新型コロナウイルスについて警告し、自らも感染して死亡したことで知られる眼科医李文亮は、12月30日、勤務先の病院の新型肺炎の患者からコロナウイルスの一種が検出された検査結果を見て、大学の同級生らのSNSグループに発信しました。
 2019年12月末には、原因不明の肺炎は、コロナウイルスの1種が原因であることが分析されていたことになります。


 原因不明の肺炎発生のニュースは、12月30日の夕方にはSNSに広まり始めました。武漢市保健当局は、それまでこの肺炎発生を広く公表していませんでしたが、12月31日SNSのウェイボーを用い、27症例を調査している、明らかな人から人への感染は発見されておらず、医療スタッフも感染していないと述べました。
 また、WHOの中国カントリーオフィスに症例の検出を報告しました。

 1月8日に中国の科学者たちが、新型コロナウイルスの遺伝子配列を決定したことが報じられました。
 SARSでの中国の失敗の教訓は、情報公開には活かされていませんでしたが、中国の医療技術は進んでいることが示されました。

 間が悪いことに、武漢市は1月6~10日、湖北省は11~17日に重要政治行事である人民代表大会と政治協商会議が開催されました。
 この会議期間は、安定が重要で問題ある情報の公開は制限されると言われます。武漢市当局から市民に対し、新型肺炎の流行に関する積極的警告は出されませんでした。

 日本は1月10日、武漢から戻った中国人の感染を報告し、中国国外での感染情報も報告され始まりました。
 1月12日頃には、武漢の病院の呼吸器科病棟が受け入れ限界に達し始め、一部の患者が受診や入院を断られるようになっていたと報じられています。

 1月18日には、武漢市保健委員会により新型肺炎4件の発生、19日に武漢で17件の新たな感染が報告された。また、武漢以外の中国各地でも感染が報告されるようになりました。

鍾南山医師の調査
 SARS克服の英雄83歳の鍾南山医師をトップとする中央政府専門家チームが、武漢に調査に入ったことで事態は急展開します。
 1月19日、武漢の感染症専門病院や武漢海鮮市場を視察した後の深夜の発表で、鍾医師は、新型コロナウイルスの人から人への感染を確認した、感染者は200人を超えたと述べました。このアウトブレイクと闘うため、政府にあらゆる可能な措置をとるよう求めました。

 20日午前、鍾医師は北京の中南海にいて、李克強首相をトップとする新型肺炎対策を討議する国務院常務会議に出席していました。

武漢封鎖
 
武漢は中国中部の主要な鉄道および道路の中心地で、国内最大の揚子江の内陸港もあります。
 武漢の
輸送機関の封鎖は、1月23日木曜の午前10時に始まりました。中国旧暦の正月である春節の連休が始まる前日のことです。中国では春節に数億人の大移動が始まると言われます。
 人の移動により、新型コロナウイルスが中国全土に蔓延するぎりぎりのタイミングで武漢封鎖が実施されたことになります。

 しかし、1月19日に武漢市長は記者会見で、春節に先立ち既に約500万人が封鎖前に武漢を発っていると語りました。恐らく、その内100万人くらいは、長期旅行で欧米に、短期旅行でタイや日本などに行ったものと思われます。

 武漢保健当局が、原因不明の肺炎発生の当初から広く警告を発していれば、世界はこのようなコロナの酷い災いに会わないで済んだと思われ残念です。

 武漢封鎖までの経緯について、詳しくは、筆者の下記ウェブページをご覧下さい。
   海外報道で綴る武漢封鎖まで (2020年6月5日)
    ① 初期感染者
    ② 眼科医の警告
    ③ 武漢市当局の発信
    ④ 海外の反応
    ⑤ WHOによる最初の警告
    ⑥ 人民代表大会と政治協商大会
    ⑦ 武漢封鎖へ
    ⑧ 武漢視察の結果


2. WHOの初動対応は適切か
 米国トランプ大統領はWHOを中国寄りと批判し、WHOへの資金拠出を停止したあと、WHOからの脱退を正式に通告しました。但し、脱退するのは1年後の2021年7月6日のことになります。
 新型コロナ対策で世界は協力しなければ時であり、米国の脱退が不適切な対応であることは明らかです。

 しかし、中国で新型コロナの流行が治まるまでの期間のWHO、とりわけテドロス事務局長の発言は、中国の意向を過度に忖度したものであったと言わざるを得ません。

 WHOのウェブサイトには、事務局長の過去のスピーチが期日順に掲載されています。大半はメディア・ブリーフィングです。2020年1月22日から3月末までの53件のスピーチを調べ、問題発言を抽出しました。なお、3月末は欧米の感染が急増し、中国の感染は既に収束した時点です。

WHO事務局長は、大きな犠牲を払って武漢を封鎖した中国に感謝しなければいけないと何度も繰り返しました。
 しかし、武漢封鎖は、翌日から春節の連休で数億人の大移動が始まり、中国全土にコロナウイルスが蔓延することを避けるために行われたものです。他国での感染を心配したものでないことは、武漢封鎖直後に、輸出予定の医療用防護服やマスクの輸出を急遽停止させたことでも分かります。
 加えて、武漢保健当局による新型肺炎の感染情報の隠蔽による初動対策の失敗が無ければ、世界はこのように甚大な新型コロナの被害を受けなかったかもしれないのです。中国に感謝する問題ではありません。
 
武漢を封鎖しても、春節に先立ち、既に数百万人の住人が武漢を出てしまっていることを中国当局は理解しており、WHOも知っていたはずです。
 WHOは武漢封鎖を称賛しながら、百万人前後の武漢住人が、既に旅行で欧米やタイ、日本などに旅立っていることを警告しませんでした。
 中国に近いアジア諸国は、独自に警戒したため、感染の大流行を避けることができました。しかし、危機感が薄かった欧米では、その間に感染が広がり、気付いた時には手遅れであったため感染の大流行を招きました。

WHOは武漢封鎖の初期に、コロナウイルスのリスクは高くないという情報を発信し、世界に間違った認識を植え付けました。
 「中国では人から人への感染があることはわかっていますが、現時点では、感染した患者の世話をする家族グループや医療従事者に限られているようです。現時点では、中国以外への人から人への感染の証拠はありませんが、それが発生しないわけではありません。」

 間違ったことは言っていませんが、中国発のこの問題を、大げさに伝えたくなかったためのように思われます。
 事務局長は1月23日のブリーフィングで、リスク評価について「中国では非常に高いリスク」だが、「世界的には中程度」と発言し、26日付けでスピーチ記録を「世界的には高リスク」に訂正しています。

公衆衛生緊急事態宣言の議論が始められたのは1月23日ですが、実際に発表されたのは1月30日です。
 事務局長は「この宣言は中国への不信任投票ではありません。それどころか、WHOは中国での集団発生を制御する能力に引き続き信頼を寄せています。」とまで言っています。
 緊急事態宣言は、事務局長が中国を訪問し、習近平主席などに会った後に発表されたものです。

 また、パンデミックの宣言は3月11日のことで、中国の感染がほぼ治まり、イタリア、スペインなどの感染急増が始まった時期です。WHOは中国の立場を忖度したことで、対応が後手に回っていたように思われます。

WHOはアドバイスとして当初から次の考えを示し、かなり後までその考えを維持しました。「国際的な旅行と貿易を不必要に妨害する措置の理由はありません。WHOは貿易と移動を制限することを推奨していません。」
 これも中国の意向を忖度したものと推測されます。1月の末には、コロナウイルスは潜伏期でも感染力があることが分かってきました。空港での体温測定では、感染者を全てスクリーニングすることが無理であると認識されてきたと思います。

 新型コロナの被害が少なかった台湾や香港などは、WHOのアドバイスを無視して、初期段階から武漢や感染地域との人の移動を制限しました。しかし、人の移動の制限が遅れた欧米は、新型コロナの大流行に見舞われました。
 人の移動制限を不要とするWHOのアドバイスは、極めて大きな実害を及ぼしたと考えます。

WHOは発展途上国での感染拡大に警報を鳴らし続けました。それは正しいことですが、先進国にも感染拡大が起きることには、ほとんど注意を払わなかったように思われます。それが、欧米の油断となり、新型コロナの大流行につながったように思われます。

WHO事務局長は、コロナウイルスの情報に関する中国の透明性を繰り返し主張しました。しかし、例えば、1月28日に習近平主席と合意した、WHOの国際専門家チームの中国訪問による現地調査が実現したのは2月16~24日のことです。それは、中国の感染が概ね治まった時期です。中国が透明性のある国と考えるのは、WHO事務局長くらいでしょう。

 WHOが初期段階に、武漢から既に多くの人が世界に旅立っていることを警告し、人の移動制限を呼び掛けたなら、コロナの世界的大流行を防げたと思われ残念です。

 WHO事務局長の発言抜粋録を含めた詳しい情報は、筆者の下記ウェブページをご覧下さい。
  
 事務局長の発言で振り返るWHOの対応は適切だったか (2020年6月5日)
     (1) 筆者の考え
     (2) テドロス事務局長の発言抜粋


3. 日本の新型コロナ対策(5月末まで)



総じて
 安倍政権のコロナ対策の失敗、とマスコミは言い続けてきました。人口100万人当りの感染者数や死者数が一桁多いドイツに学べと言う意見までありました。
 緊急事態宣言が発せられる4月初めには、2週間後に日本は、コロナ大流行のイタリアを追従しているだろう、という海外の医療関係者の指摘もあったのです。

 しかし、緊急事態宣言が解除された5月の後半には、日本のコロナ対策は理解し難いが、日本はうまくやったというのが欧米の一般的評価でした。

 データを見れば、コロナの大流行に見舞われた欧米先進諸国に比べ、人口当たりの感染者も死者も一桁少なく、都市封鎖・緊急事態宣言による自粛期間も日本は短かったのです。自粛によるGDPの減少も、8月になって示されたことですが、それら欧米諸国より少ないものです。

専門家会議と政治判断
 緊急事態宣言解除までの日本の新型コロナ対策は、2月14日に設置された専門家会議が大きな役割を果たしました。専門家会議は責任を果たすため、公式の会議の他に、週に1-2回の勉強会を開いて分析検討を行っていたと言われます。

 政治判断が見えないという批判も多々ありましたが、コロナ対策に関して知識も判断力もない政治家が、政治主導で取り組まれても困ります。

ピークを遅らせる
 2月の後半に入ると感染増加の兆しが見られました。専門家会議は2月24日、「これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と警告を発し、感染のピークを遅らすべきという見解が示されました。
 急激な感染増加を防ぎ、ピークを抑制するとともに遅らすもので、その間に医療体制を整備することが目的です。具体的には、海外からの感染者の入国を防ぐとともに、感染の大量発生に繋がる機会を減らすものです。


 専門家会議の見解をもとに、翌25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」が出され、感染の集団発生を防ぐクラスター対策が注目されました。

 翌26日には安倍首相からイベントなどの中止・延期要請が出され、27日には全国の学校に休校要請が出されました。春休みまでの期間を想定したものでしたが、ほとんどの学校は、緊急事態宣言が解除されるまで休校が続くことになりました。政治主導で行われた学校休校要請には、根拠が明確でないという批判がありました。

クラスター対策
 2月28日には、北海道での大量感染に対応するため、知事権限による「新型コロナウイルス緊急事態宣言」が出され、また、国のクラスター対策班による調査が行われました。

 クラスター対策は、感染者の大量発生経路を追跡して、感染者の増加を防ぐものです。
クラスター対策は、その後、大阪のライブハウスなど、全国の集団感染事象に適用され、有効に機能しました。

3密を避ける
 3月9日専門家会議は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえている、と見解を示しました。その上で、集団感染が確認された場に共通するのは、下記3 つの条件が同時に重なった場合、と述べました。クラスター発生のリスクを下げるため、3密を避けることが求められるようになりました。
 ①換気の悪い密閉空間、②多くの人が密集していた、③近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声

自粛要請
 しかし、3月末頃から感染者の急増が始まりました。欧米でのコロナ流行により、海外からの帰国者と訪日者がもたらしたウイルスが、3月後半の3連休で広がったと考えられています。

 3月25日都知事は、夜間・休日の外出自粛などを都民に要請しました。3月28日安倍首相は、自治体などによる外出自粛要請に応じるよう国民に呼び掛けるとともに、最悪の事態を想定しながら、感染拡大の防止に全力を尽くすと語りました。

緊急事態宣言
 緊急事態宣言を求める声が増加する中で、政府は慎重な姿勢を取り続けましたが、4月7日に緊急事態宣言が出されました。東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に5月6日までの予定でした。4月16日には緊急事態宣言は全国に拡大されました。

 専門家の試算では、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができるということでした。3密を防ぐことに加え、外出自粛が要請されることになりました。

接触機会の8割削減
 軽症者や無症状の見えない感染者が蔓延してくるとお手上げかと言えば、そうではありません。見えない感染者がいくら増加しても、2~3週間すれば、大半の感染者は自分の免疫力でコロナウイルスを駆逐し感染者ではなくなります。

 問題は、その期間に他人を感染させなければいいわけです。統計的に1人が0.5人に感染させれば感染者は半分になり、2人に感染させれば感染者は2倍に増えます。
 他人に感染させない対策が、接触機会を削減することです。例えば、感染者による接触機会を半分にし、感染する可能性がある一般の人の接触機会を半分にすれば、0.5×0.5 = 0.25で、感染は1/4になることになります。
 これは大雑把な計算ですが、北海道大学の西浦先生は数理モデルで検討し、接触機会の8割削減が必要と主張しました。


医療体制の整備
 感染者の急増により医療体制の逼迫、地域によっては医療崩壊に近い状態にあることが報じられました。
 重症の患者の医療施設確保を中心とした対策が取られました。重症患者と中等症患者の入院先を明確に分けることで、重症患者用の医療施設を確保する神奈川方式などが考案されました。また、軽症や無症状の感染者が、他人に感染させるずに療養する場所として、ホテルを借り上げて宿泊させる方式が多くの地域で実施されました。

 厚生労働省が発表している感染情報によれば、入院治療を要する人数は5月の初めころにピークの12,000人近くに達し、その内無症状・軽症・中等症の患者が約5,600人でした。人工呼吸器やECMOの使用、集中治療室に入院している患者のピークは約330人でした。

 医療用のガウンやマスクなどの資材不足は、最後まで解決しなかったように思います。主たる生産地の中国が、武漢封鎖の直後に自国で必要な医療資材を確保するため、輸出禁止措置をとったためです。

 全世帯に繰り返し使えるガーゼ製マスクを2枚ずつ配布するという「アベノマスク」は、安倍政権のコロナ対策の失敗の代表として非難されました。本来、毎日使い捨てで使用していたマスクを、1億2,600万人分急遽手配することなど所詮無理なことだったのです。

PCR検査
 非難が最も多かったのは、他の先進国と比べて低いPCR検査能力の問題です。政府はPCR検査能力の増大を約束しましたが、部分的改善に留まりました。
 その結果、コロナ感染が疑われてもPCR検査を受けらなかったケースや、コロナ感染者としての入院治療が遅れ亡くなられた方も出ました。

 日本のコロナ対策は、乏しいPCR検査能力を前提に、感染可能性の高い症状が出ている患者を中心にPCR検査を行うものでした。
 医療体制が整うまで、軽症や無症状感染者を積極的に検出しないことは意味があったと考えます。しかし、感染が疑われるのにPCR検査ができなかったのは問題です。

 PCR検査能力の充分な増強ができなかった理由として、先ず、保健所を中心とする従来の検査体制は、要員と設備の両面で増強の余地が乏しかったことがあったのだと思います。
 従って、民間の検査会社を活用することが必要だったわけですが、2-3ヶ月で要員と設備を増強することは難しかったのでしょう。また、コロナのPCR検査の必要性は1年位で無くなるかもしれないという判断や、臨床検査会社や感染症関連組織の利害の問題も絡んでいたのかもしれません。
 ウェブには、PCR検査の能力増大ができなかった理由の説明が見られますが、一国の首相が約束したことがなぜ実行できなかったか、納得し難いように感じます。


緊急事態宣言の延長
 5月4日安倍首相は、緊急事態宣言解除を5月31日まで延長すると発表しました。新規感染者はピーク時の3分の1まで減少し、実効再生産数も1を下回っていると説明した上で、次のように述べました。
 現時点で1万人近い方々がいまだ入院などにより療養中です。この1か月で人工呼吸器による治療を受ける方は3倍に増えました。医療現場が過酷な状況に置かれている現実に変わりはありません。これまでに500名を超える方々がお亡くなりになりました。医療資源を更に重症者治療に集中していく必要があります。特に警戒が必要な13都道府県は、引き続き極力8割の接触回避のための協力をお願いします。

 首都圏で感染者が無くならない理由は、後に分かったことですが、ホストクラブ等が営業を続けており、軽症・無症状のホストなどが感染を広めていたためではないかと思われます。

緊急事態の解除

 緊急事態の延長は、5月14日を目途に再評価することになっており、感染の少ない39県の緊急事態宣言は予定通り解除され、5月21日には大阪、京都、兵庫の3府県の緊急事態宣言も解除されました。
 残る北海道、東京、埼玉、千葉、神奈川については、感染者数がなかなか減少しなかったのですが、5月末を待つことなく5月25日に解除されました。これ以上自粛を続けることは、経済への影響が大きくなるという判断によるものと想像されます。

コロナ対策の評価
 「感染のピークを遅らせる」方針は、実績データを見れば、明らかに成功でした。「クラスター対策」も感染が少ない段階では効果を上げました。「3密を避ける」方針は、適格な指針であったと思います。政府のコロナ対策を批判した人達が、3密を避けるような適切な対策を提案できたか疑問です。

 クラスター対策で対応できないほど市中の感染者が増加すると、3密を避ける方針に従って「イベントや外出を自粛」する方針に転換されました。

 緊急事態宣言の解除は当初予定の1ヶ月より、8日~19日遅れました。しかし、下表に示すように、欧米では都市封鎖という強硬手段がとられ、個人のプライバシーを侵す対策が取られる国もあったのに対し、日本はマイルドな自粛要請により、短い期間で緊急事態宣言を解除しました。



 これらの成果は、専門家会議に負うところが多いと思いますが、未経験のウイルスを相手に不明の点が多い中で、必ずしも正鵠を得ない多くの批判に耐えながら、日本はかなりうまくやってきたと考えます。


 アベノマスクとPCR検査能力の増大は失敗でしたが、都市のロックダウンもせず、欧米先進国に比べて短い自粛期間で、感染者も死亡者も少なかった。自粛によるGDP低下も欧米より少ないものでした。データを基に語ることが重要です。

 本項について詳しくは、筆者の下記ウェブページをご覧下さい。
   日本のコロナ対策 (2020年6月5日)


4. 20代の感染急増、コロナと経済の両立(6月以降)
 緊急事態宣言による自粛要請により、日本のコロナ感染者は明らかに減少しました。しかし、全ての都道府県の感染状況は一様ではありませでした。

都道府県の状況

 下図は札幌医科大学による感染データによるもので、全都道府県での5-6月の感染者数の推移を示しました。5月後半にスポット的クラスターが発生した石川、山梨、愛媛を除いています。

 人口100万人当たりの過去7日間の感染者数の推移を示していますが、5月の末にほとんどの県は、百万人当たりの感染者数が1名以下になっています。

 しかし、東京や北海道は、緊急事態宣言が終了した5月末になっても、感染者数は1以下に減少しませんでした。その他、福岡は図からは読み取り難いのですが、5月中旬に一旦感染者が1以下に減少したあと、急増しました。神奈川の感染者は、東京由来のものも多いと思われますが、1以下になりませんでした。



 東京などの感染者数は、人口100万人当たり7日間の合計が7~8人ですから、1日の感染者は1名前後と、かなり少ない感染者を問題にしています。
 しかし、東京、北海道、福岡などの感染者の推移は単なるデータのバラツキつきではなく、上図を見れば、明らかにその他の県とは異なることが分かると思います。

 少ない感染者のままなら許容できるのですが、感染抑制が働かないと、それが引き金になり、全国に感染が広がってしまうのが感染症の特徴です。
 東京、北海道、福岡の感染者がほとんどゼロにならないのには原因があるはずで、それを見出し対策を講じることが不可欠です。

大歓楽街
 東京には歌舞伎町、北海道には札幌のすすきの、福岡には中州という三大歓楽街があります。もしかしたら、これらの歓楽街の特質が、自粛要請をしても感染者が無くならなかった原因ではないかという想いがします。
 歓楽街での感染者が引き金になり、飲み会で仲間に感染させ、その家庭にコロナが持ち込まれるというのが典型的な感染拡大の流れでしょう。

 後から分かったことですが、歌舞伎町の一部業種では、緊急事態宣言で2週間ほどは営業を自粛したが、その後は目立たない形で営業を続けていたと言われます。

 歌舞伎町には数千軒のスナックや風俗店があると言われます。そのほとんどは自粛要請に従ったものと思われます。しかし、一部ですが無視できない数の事業者が、同業者がやっているのだからという理由で、自粛要請を無視したのではないかと想像されます。

 後に都知事は、歌舞伎町のホストクラブなどに、多数の軽症や無症状のコロナ感染者がいることを述べています 。

 歌舞伎町のコロナ感染状況と対策のデータは、あまり公開されていないように思いますが、下表は新宿区が公表しているPCR検査のデータを整理したものです。
 7月前半の「夜間の接客業を含む飲食業」の従業員のPCR検査実績では、驚くべきことに、PCR検査の陽性率は50%近くに達しています。



 自粛を続けたら倒産するという止むに止まれぬ事情があったのだと思います。コロナ問題で一部の人を攻撃することは本意ではありませんが、もし、そのことが感染者が無くならなかった原因であったなら、それにより神奈川、埼玉、千葉を含めた首都圏3,600万人が、緊急事態の19日間延長に付き合わされたことになります。

東京、20代感染者の急増
 緊急事態宣言解除後、6月末頃から東京では感染者の急増が始まりました。その多くは、20代、30代が占めていました。
 都知事選を前に小池都知事は、新宿歌舞伎町のホストクラブなどの「夜の街」の協力により、若い従業員に対する多数のPCR検査が実施されているためで、心配することではないと繰り返しました。

 下図に、東京都の感染者数の推移を、5月20日以前と以後に分け、感染者が多い20代、30代、40代、50代の毎日の人数を示しました。





 また、下図には、10代以下から90代以上まで、1週間の感染者数の推移を示しました。



 これらのグラフからは、下記傾向が読み取れます。

  ①4月頃に、20代から50代で、陽性者数に顕著な差はない。
  ②4月頃に比べ7月以降は、20代~50代では陽性者が顕著に増加している。
  ③7月以降では、20代、30代の陽性者数は、40代、50代に比べて顕著に増加。
  ④4月頃と比べ7月以降で、40代、50代の陽性者数の増加はそれほど大きくない。
  ⑤4月頃の60代~80代の陽性者数は、20代~50代に比べて少ない。
  ⑥4月頃に比べ7月以降で、60代~80代の陽性者数は、ほとんど増加していない。
  ⑦4月頃に、10代以下の陽性者数は90代と同程度と少ない。
  ⑧7月以降、10代以下の陽性者数は増加しているが60代と同程度。


 東京都で20代、30代のコロナ陽性者が急増したのには幾つかの理由が考えられます。
 先ず、4月頃のコロナ陽性者は、明確な症状がある人のPCR検査結果が主でした。その他に、検出されなかった軽症や無症状の多くの感染者がいたのかもしれません。当時、PCR検査陽性者の5倍位の感染者がいるのではないかという専門家の指摘がありました。

 7月頃からの20、30代のコロナ陽性者の増加には、都知事が述べた新宿歌舞伎町のホストクラブなどの若い従業員のPCR検査結果が含まれているものと想像されます。

 更に、若年層はコロナに感染しても、基礎疾患がなければ重篤化しないという情報が、知れ渡ったことも影響しているかもしれません。若い人も、それなりに自粛しているように思いますが、たまの飲み会などで集団感染が報じられるのは、自らに対するコロナのリスクは、インフルエンザ程度と考えているためではないでしょうか。

コロナと経済の両立
 7月末には1日の全国の感染者数が1,500名を超え、以後、度々起きるようになりました。感染多発都道府県の知事は堪りかね、政府に再度の自粛要請の発令を要望するようになりました。

 しかし、政府は経済的に深刻な悪影響を与える再度の緊急事態宣言を出すことには慎重な立場をとり続けました。
 医療提供体制には少し余裕があること、重症者数も以前のピーク時に比べれば少ないこと、感染者が多くても30代以下の軽症者や無症状者が多く占めていることなどが理由です。

 それに加え、コロナに対する自粛を緩和した主要先進国に比べ、感染者や死者が少ないことが、その判断の根底にあったのではないかと思われます。

 下図は、札幌医科大学がウェブに公開しているデータで、前者は過去7日間の人口100万人当りの感染者数、後者は同じく7日間の100万人当りの死者数を日本と米国、英国、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスで比較したものです。

 感染者数では米国が飛びぬけて多く、最近感染者が急増しているスペインが続いています。日本は、フランス、英国、ドイツの感染者数と概ね同水準です。
 死者数では、日本は最近増加していますが、それでも他の先進国に比べてかなり少ない水準です。

 注意すべきは、他の国々が自粛を緩和しても、感染者の増加は緩やかであるのに対し、日本の感染者増加が大きい点です。なお、日本も8月上旬には増加のピークを迎えたようです。

 主要先進国の7月以降コロナ感染者数(過去7日間の増加)比較
     出所:札幌医科大学新型コロナウイルス感染データのウェブページ


 
主要先進国の7月以降コロナ死者数(過去7日間の増加)比較
     
出所:札幌医科大学新型コロナウイルス感染データのウェブページ


 コロナと経済の両立のためには、感染者数は現状のレベルであっても、これ以上増加しないようにする対策が必要と思われます。

日本に必要なコロナ対策
 日本に求められるコロナ対策の重点としては、20、30代の軽症、無症状感染者から、重症化しやすい高齢者への感染を防ぐことと、これ以上の感染増加を抑制する対策です。

 若年層から高齢者への感染を抑制する対策は、知恵を出す余地があると思います。例えば、昼食時に高齢の客が多いレストランはかなりあります。かつての喫煙席のように高齢者専用席を設ければ、感染防止のため外食を自粛している高齢の客を呼び戻すことに役立つでしょう。また、鉄道車両に、高齢者専用車両を設けることも考えられます。

 感染の増加抑制は、複数の対策の実施により実効再生産数を1以下できればよいわけです。

 高い効果が期待されるのは、多くのコロナ感染者の集中が想定される歓楽街の対策だと思います。
 対象地域・業種の従業員全員にPCR検査を求めることは、権利やプライバシーの侵害ではないと思います。
 PCR検査陽性の従業員がいなかった事業者は営業を続けてもらい、一人でも陽性者がでた事業者は、2~3週間の営業停止を求めてはどうでしょう。従業員に感染者が出ないよう、緊張感をもって営業してもらえるようになると考えます。
 その地域の感染者がほとんど無くなるまで、1か月くらいの間隔でPCR検査を続けることが必要でしょう。


 歌舞伎町、すすきの、中州という特殊な歓楽街に、コロナ拡大の引き金があるように思われてなりません。そうでないなら、感染データを報告してもらいたいものです。感染者が集中していることが分かっていながら、充分な対策を講じずに、広域に感染が拡大した段階で多くの人に自粛を求めるのは、適切な対応と思われません。

 本項について詳しくは、筆者の下記ウェブページをご覧下さい。
   20代の感染者急増、コロナと経済の両立 (2020年8月13日)