データをもとに考える電源構成の再構築

ドイツの太陽光発電の価格は20万円/kW前後

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福島第一原発の事故を契機とした、電源構成の見直しに係わる情報を下記に掲載しており、このページもその一つです。

       データをもとに考える日本の電源構成の再構築



      ドイツの太陽光発電の設備価格は20万円
/kW前後 (2013年1月19日)

ドイツの価格
  ドイツ太陽光工業協会(BSW)による2012年第4四半期の公表では、10kW以下の太陽光発電設備の平均価格は、据付費を含み税抜きで1751ユーロ/kWです。為替レートが円安に戻りつつありますが、日本円で約21万円/kWです。日本での太陽光発電の設備価格の半分程度です。



  2012年7月に開始された日本の再生可能エネルギーの固定価格買取制度で、太陽光発電の買い取り価格は42円/kWhに設定されました。
  一方、ドイツの買い取り価格は、図-2に示すように、30kW以下の設備では24.4ユーロ/kWh、1000kW以上のメガソーラでは18.3ユーロ/kWhです。日本円にすると、各々29円/kWhと22円/kWhになります。
  日本では太陽光発電の設備価格が高いため、買取価格も高く設定されました。火力発電などの発電原価は10数円/kWhですから、高い買取価格との差額は、電気料金に上乗せられて、国民全体で負担しています。

  太陽光発電の設備価格は、一般に、太陽電池モジュールと、その他の部分に2分して検討されます。モジュール以外の部分は、Balance of System(システムの残り)、略してBOSと呼ばれます。BOSの価格には、インバーター、配線、設置金物などのハードウェアとともに、据付費、諸経費、利益などが含まれます。
  図-3は、ドイツの太陽光発電の設備価格の推移を、モジュールとBOSに分けて示したものです。ドイツを代表する研究機関のFraunhoferの資料から引用したものですが、元データは、前述のBSWのもののようです。
  モジュール価格の低下が著しいことが分かります。工場で大量生産されるモジュールは、市場規模の拡大や技術革新により、大幅なコスト低減が期待できます。
  一方、BOSは太陽光発電の設置事業者の仕事に依存するもので、モジュールほど価格の低下は顕著ではありません。モジュール価格の低下により、モジュールとBOSが半々となる価格構成に近づいており、今後は、BOSの価格低減にも注目する必要があります。

  図-4は少し詳しいデータで、ドイツ銀行のレポートからとったものです。モジュール価格をウェハ化、セル化、モジュールに3分割し、BOS価格と共に、コストと粗利に分けて示しています。ドイツの2010年の価格の分析です。
  太陽光発電の価格低減のためには、ハードウェア以外の設置費用や諸経費、利益などの低減も重要になっています。

海外と日本の価格
  ドイツ以外の国々と比べ、日本の太陽光発電の価格は高いのでしょうか。図-5は、国際エネルギー機関の太陽光発電プログラム(IEA-PVPS)のレポートのデータです。プログラム参加国での、10kW以下の設備で、据付費を含み税抜きの価格です。薄い色のグラフ部分は、上下限範囲を示しています。
  米ドル価格で表示しており、2011年の円高傾向を考慮しても、日本の太陽光発電の設備価格は、高いことが分かります。なお、スイスやカナダも同程度ですが、図-7に示すように、太陽光発電の設置量は、日本に比べて遥かに少ないものです。太陽光発電の導入量が日本と同程度で、日本のように設備価格が高いのは米国だけです。



  図-6は、モジュール価格の比較を示しています。オランダとオーストリアの上限価格が高いのは、
特殊品のモジュールに対するもので、比較するのは適当ではありません。それを除くと、日本のモジュール価格が非常に高いことが分かります。
  

 
  太陽電池モジュールは、国際的に取引されている商品です。日本のモジュール・メーカーも国際的に事業展開しています。そのような商品なのに、日本での価格が異常に高いことは奇異なことです。メーカ
ーの工場出荷価格と、エンドユーザーに提示される価格に、大きな乖離がある可能性が考えられます。

米国はなぜ高い?
  かつては太陽光発電の先進国であった日本の価格が、なぜこのように高いのでしょうか。理由は、おおよそ想像できる気がしますが、根拠を示すウェブ情報は殆どみられないようです。
  そこで、英語のウェブ情報を探してみると、下記レポートが見つかりました。タイトルは訳すと「住宅用太陽光発電のドイツの価格は、なぜ、そんなにも米国より安いのか?」となります。50頁ほどのプレゼンテーション資料です。インターネットには、必ず、同じ問題意識の情報があるものです。
  Why are residential PV price in Germany so much lower than in United States?
  
Joachim Seel ほか, Lawrence Berkeley National Laboratory, Sept. 2012
  
  米国はモジュール価格はそれほど高くないので、BOSがなぜ高いのかが検討の主題になっています。ドイツの太陽光発電の設置事業者に対する調査を行い、米国の設置実績と対比しています。以下に検討結果を箇条書きで示しました。なお、対象は住宅用太陽光発電設備で、2011年の価格です。( )内には1米ドル=90円で換算した値を併記しました。



  上記の多くの指摘は、日本にも当てはまると思います。

日本の買取価格
  再生可能エネルギーの買取価格は、調達価格等算定委員会の意見をもとにしています。太陽光発電の42円/kWhの買取価格は、高い日本の設備価格をそのままに、発電事業者やメーカ団体の要望に沿ったものとの感は否めません。同委員会の意見の中には、太陽光発電設備の価格低減策を講じるべきとの指摘は見られないようです。

  高い買取価格を設定すれば、資金余力のある人には確実な投資であり、太陽光発電の導入は進むでしょう。その結果、買取制度の負担は、余力のない弱者に集中します。また、10kW以下は10年間、10kW以上は20年間固定価格で買い取る制度ですから、負担は長期に亘ります。

  2013年度の買取価格の検討が、そろそろ始まると思います。現状の太陽光発電の高い設備価格を前提にするだけでなく、価格の低減策も是非考えて戴きたいと思います。行政の仕事は、少ない国民負担で効果的に成果を上げたかで評価されるべきものです。


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(2013年8月) 

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