コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック
新型コロナ、なぜ人から人への感染の警告が遅れたか
(2020年10月8日)

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はじめに
 新型コロナは、発生当初には想像もできなかった禍を全世界にもたらしました。過ぎたことを考えても詮無き事かもしれませんが、同様のことがまた起きるかもしれませんから、経緯を整理しておくことには意義があると思います。

 発生初期の問題として、ウイルスの感染源と、人から人への感染警告の遅れが重大な事項です。前者は、現地調査と関係者のヒアリングが不可欠で、中国の協力が得られるか定かではありません。

 一方、人から人への感染警告の遅れの原因は、状況証拠を積み重ねれば、答えが得られるように思われます。10日早く、人から人への感染を警告し対応をとっていたら、後述するように、パンデミックの発生を防げたかもしれないのです。


1. 最初の公表
 2019年12月30日、眼科医李文亮は勤務先の病院で原因不明の肺炎の患者から、コロナウイルスの一種が検出された検査結果を見つけました。大学の同級生らのSNSグループに「武漢海鮮市場で7人の感染者が確認された」と発信し、同日夕方「コロナウイルスの感染が確認され、どのタイプか調査中」と補足しました。原因不明の肺炎発生のニュースは、同日の夕方にはSNSに広まり始めました。

 武漢市保健当局は、12月31日、SNSのウェイボーを用い原因不明の肺炎の発生について発信すると共に、WHOに症例が検出されたことを伝えました。原因不明の肺炎発生の公式な発表の最初でした。

 武漢保健当局の発表は現在削除されています。報告を受けたWHOが2020年1月5日に掲載した新型コロナウイルスに関する最初の疾病発生ニュースには、「1月3日の時点で、原因不明の肺炎患者合計44人が中国の国家当局からWHOに報告されています」とした上で、「中国の調査チームからの予備情報に基づいて、人から人への重大な感染の証拠および医療従事者の感染は報告されていません」と記載されています。

 新型コロナの人から人への感染の警告が公式に示されたのは2週間後のことです。 2020年1月19日、SARS克服の英雄である鍾南山医師が中央政府専門家チームのトップとして武漢を視察した後、深夜の発表で、新型コロナウイルスの人から人への感染を確認した。感染者は200人を超えたと述べました。

 しかし、武漢が封鎖された1月23日、WHO事務局長の記者会見では、「中国では人から人への感染があることはわかっていますが、現時点では、感染した患者の世話をする家族グループや医療従事者に限られているようです。現時点では、中国以外への人から人への感染の証拠はありませんが、それが発生しないわけではありません。」と、相変わらず曖昧な説明が繰り返されています。


2. 新型肺炎の発生初期の状況
 下図は、世界5大医学誌の一つと言われるこのLancet医学ジャーナルの報告に掲載されたものです。恐らく、中国の医療関係者による原因不明の肺炎に関する医学誌への最初の報告と思われます。

 2020年1月2日までの症例の分析結果で、臨床検査で確認された症状発症日の分布を示し、赤は武漢華南海鮮卸売市場と接触のあった人数です。合計41の症例の3分の2が武漢海鮮市場と接触があったため、市場で扱われているコウモリなどの動物が感染源と疑われ、同市場は封鎖されました。

 しかし、最初の感染者を含め14例は、海鮮市場と接触がなかった人です。感染した人からの新型コロナの感染が無いのなら、病原体との接触で感染したことになります。海鮮市場封鎖後も感染者は増加しており、病原体がどのよう感染者まで運ばれたのか疑問が残ります。

 このLancet誌は2月15日号ですが、1月24日にオンライン公開されているものです。Lancet側での査読期間や著者側での原稿作成期間を考慮すれば、これらの症例に関する情報は、1月上旬には著者の医療関係者に知られていたものと思われます。



 出所:The Lancet, Vol. 395, Issue 10223, P497-506, Feb. 15, 2020
  "Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China"

 2019年末には、原因不明の肺炎はコロナウイルスの一種によることが分かっていました。しかし、なぜ人から人に感染しないと考えられたのか、海外のウェブ報道により見ることにしましょう。

[海外ウェブ報道の抜粋]


2020/01/03 - BBC NEWS
China pneumonia outbreak: Mystery virus probed in Wuhan
・武漢保健当局によると、謎のウイルス性肺炎合計44件が確認、そのうち11件が重症。

・シンガポールと香港は、武漢市内からの旅行者のスクリーニングを導入。
・武漢警察は、「確認なしにインターネット上で虚偽の情報を公開または転送」した8人(李文亮医師など)は罰せられたと述べた。
・武漢保健委員会は発生の原因を調査していると述べた。
・多数の感染源候補は除外されていると述べたが、SARSについては言及されなかった。
・人から人への感染はなかった、と声明は付け加えた。

2020/01/04 - STRAITS TIMES (シンガポール)
Wuhan pneumonia: First suspected case reported in Singapore
・シンガポール保健省は1月4日、武漢ウイルスの最初の疑われた症例として、肺炎と中国への旅行歴を持つ中国出身の3歳の少女が通知されたと発表した。彼女は武漢の華南水産物卸売市場を訪れていなかったと言及した。

2020/01/04 - STAT
Experts search for answers in limited information about mystery pneumonia outbreak in China

・ノースカロライナ大学のコロナウイルス専門家であるラルフバリックは、感染症の発生に対する中国の取り組みは、SARS以来、大幅に進化していると述べた。
・中国はこれに取り組む世界で最高のウイルス学者の多くを持っている。
・武漢保健当局は、人から人への感染はないと述べた。しかし、何が病気の原因か、発症するまでにかかる時間、および軽度の症例を検出できる検査法を開発していない限り、現時点で、人から人への感染を除外できるかどうかは不明である。
・病原菌が何であるかを知らない限り、感染した人が海外旅行や中国の他の場所へのスクリーニングプラットフォームをすり抜ける可能性は高くなる。

2020/01/05 - WHO Disease outbreak news
Pneumonia of unknown cause – China
・2019年12月31日、原因不明の肺炎の症例がWHO中国カントリーオフィスに通知された。
・2020年1月3日の時点で、患者合計は44人、そのうち11例は重症で、残りの33例は安定した状態と中国の国家当局から報告された。
・メディアの報道によると、武漢の関係市場は2020年1月1日に閉鎖された。
・原因物質はまだ特定されていない。
・全ての患者は、武漢の医療機関で隔離され治療を受けていると報告されている。

・一部の患者は武漢海鮮食品市場でディーラーまたはベンダーを運営していた。

・中国の調査チームからの予備情報に基づいて、人から人への重大な感染の証拠および医療従事者の感染は報告されていない。
・120人の密接な接触者の連絡先が特定され、医学的観察を受けている。
・武漢市保健委員会が積極的な症例発見を行い、遡及調査が完了した。
・WHOのアドバイスとして、旅行者に対して特定の対策を推奨していない。

2020/01/03公表、2020/01/06更新 - AAAS
Novel human virus? Pneumonia cases linked to seafood market in China stir concern
・武漢保健当局は1月5日、59人の発症が確認された肺炎の原因として、SARSとMERSを除外した。
・委員会は人から人への感染を除外しているが、患者との密接な接触がある121人が監視下にある。

2020/01/06 - STAT
Cause of Wuhan’s Mysterious Pneumonia Cases Still Unknown, Chinese Officials Say
・原因不明の肺炎の感染者は、1月3日の44人から5日には59人に増加した。
・武漢市保健委員会の発表で、知られている最初の感染者は12月12日に発症したもの。

・武漢当局によると、予備調査では、人から人への感染の明確な証拠はなく、医療従事者の感染もない。
・ノースカロライナ大学のラルフバリック氏は、「彼らが言及した日付と、医療従事者が感染していないという事実から、人間に効率的に伝染していないことを示唆している」と述べた。

2020/01/09 – WHO statement
WHO Statement regarding cluster of pneumonia cases in ...
・中国当局は、1つの陽性患者サンプルからの分離株を使用して、ウイルスの遺伝子配列決定を行った。
・この肺炎のクラスターを起こす可能性のある病原体としてコロナウイルスを指摘し、その後、SARS、MERS、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルス、およびその他の一般的な呼吸器病原体を除外した検査結果を報告した。
・コロナウイルスは大きなファミリーで、風邪などの重症度の低い疾患と、SARSなどの重度の疾患を引き起こすものがある。人から人へ伝染し易いものもあれば、そうでないものもある。中国当局によると、問題のウイルスは一部の患者に深刻な病気を引き起こす可能性があり、人と人の間では容易に伝染しない。
・いくつかの既知のコロナウイルスは、まだヒトに感染していない動物で循環している。
・過去1週間で、肺炎の症状があり、武漢への旅行歴のある人が国際空港で確認されている。
・WHOは、旅行者に対して特定の対策を推奨していない。現在入手可能な情報に基づいて、中国への旅行または貿易の制限を適用しないようアドバイスする。

2020/01/09 - CNN
New SARS related virus, Wuhan pneumonia, idenitified in ...
・中国国営放送CCTVの1月9日の報告よると、武漢市中心部の57人の患者のうち15人に、新型コロナウイルスが発見され、そのうち一人のサンプルから全ゲノム配列が得られたという。
・新型コロナウイルスは、SARSやMERSほど致命的ではないようです。CCTVによると、8日の時点で8人の患者が回復して退院し、死亡例は報告されていない。
・武漢市保健当局は、人から人への感染の明白な証拠はなく、医療従事者も感染していないと述べた。
・WHOによると、コロナウイルスは人間と動物の両方に感染する可能性がある。
・韓国、香港、シンガポールなどアジア全域で政府は、武漢の発生を契機に、空港の体温スクリーニングや通知要件などの予防策を強化している。

2020/01/09 – ECDC(EUのCDC)
Threat Assessment Brief: Pneumonia cases possibly ...
・武漢保健当局による2019年12月31日から2020年1月5日の報告を紹介した上で、次のように述べています。
中国の旧正月のお祝いは、中国への旅行と中国からの旅行、および中国国内の旅行の量を増加させ、その結果、感染症例が増加する可能性が高まります。但し、人から人への感染の兆候がないため、旅行者へのリスクは低いと考えられる。同じ理由で、武漢以外で検出された症例が無いため、EUへの感染の侵入の可能性は低いと考えられるが、除外することはできません。EU内でさらに広がるリスクは、非常に低いと見なされます。

2020/01/09 - scmp (香港)
Wuhan pneumonia: what we know about the new virus and ...
・武漢市保健委員会による12月31日の最初の公表で、海鮮市場に関連する肺炎の症例が27例あり、最初の患者が12月12日に発症したもの。
・武漢で確認された症例と密接に接触した163人も医学的監視下に置かれている。

2020/01/09 - INDEPENDENT
Wuhan pneumonia: Mystery China virus is from same family as Sars, scientists say
・WHOの専門家は、新型肺炎の原因はコロナウイルの一種の可能性があると言っている。
・中国当局によると、人から人へと簡単に伝わらないようである。病気のほとんどのケースは、中国中部の都市のシーフード市場にリンクされていると述べている。

2020/01/11 - STAT
First death from Wuhan pneumonia outbreak reported as scientists release DNA sequence of virus
・武漢市保健当局は、この肺炎による最初の死亡を報告。61歳の男性が1月9日に死亡した。
・武漢保健当局は1月11日、人から人への感染の明確な証拠は見られなかったと繰り返した。
・保健当局は、419人の医療従事者を含む739人のこの肺炎患者の接触者を監視しているが、ウイルスに感染しているようには見えない。

2020/01/14 - Bloomberg
61-Year-Old Patient Is First to Die in Wuhan Pneumonia Outbreak
・1月9日、61歳の男性がECMOなどの治療を行ったが武漢肺炎で最初の死亡。

・感染時に腹部腫瘍と慢性肝疾患を患っており、武漢海産物市場の常連客だった。

2020/01/14 - BBC NEWS
Wuhan pneumonia outbreak: First case reported outside China
・武漢からバンコクに上陸した女性が武漢肺炎と診断され隔離された。
・何億人もの中国人が、今月末の旧正月に向け旅行の準備をしている。タイは中国人の主要な旅行先で旅行期間の直前である。

2020/01/15 - TAIWANTODAY
CDC monitoring Wuhan pneumonia outbreak
・台湾厚生省の疾病管理センターによると、武漢肺炎の発生を綿密に監視しており、予防策は完全に実施されている。WHOが発表した情報に基づいており、これまで人から人への感染の証拠は見つかっていないが、可能性を排除することはできない。台湾で何らかのケースが発見された場合の検疫、診断、検査、封じ込めの準備は完了している。

2020/01/16 - scmp
Wuhan pneumonia: China steps up efforts to control spread of coronavirus
・中国中部の空港は全ての乗客に温度チェックを導入した。
・日本在住で武漢に旅行した中国人男性が、国外で2番目の感染ケースとして確認された。
・2人の中国人観光客が、ベトナム到着時の検疫で発熱の兆候を示し隔離された。

・ウイルスが海外に広がる可能性がある。

2020/01/16 - NST TV
China says second person dies in Wuhan pneumonia outbreak
・武漢市保健委員会によると、69歳男性が武漢肺炎で2人目の死亡。


3. なぜ人から人へ感染しないと考えたのか
 上記のウェブ報道によれば、新型肺炎に関わった多数の医療関係者や濃厚接触者は、医学的監視下に置かれていました。1月10日頃まで、それらの人達が肺炎を発症しなかったことが、人から人へ感染しないとされた根拠のようです。

 医療関係者は、新型肺炎が人に感染するものとして、感染対策をしていたため、感染しなかったものと想像されます。
 感染者の家族などの同居者が感染しなかった理由はよく分かりません。基本的には、感染力がそれほど強くないためでしょう。その他、感染しても軽症や無症状で気付かなかった可能性や、1月10日頃までの時点で潜伏期の人もいたのかもしれません。

 感染力がそれほど強くないため、感染者総数が数十人のうちは、新たな感染症例はほとんどなかったということかもしれません。

 2020/01/06 – STATの報道で、ノースカロライナ大学のラルフバリックが述べている「何が病気の原因か、発症するまでにかかる時間、および軽度の症例を検出できる検査法を開発していない限り、人から人への感染を除外できるかどうかは不明」と言っているのは正論でしょう。
 また、武漢肺炎が「人間に効率的に伝染していないことを示唆している」というのも実態を表していると思います。



4. いつ人から人への感染に気付いたか
 感染源と疑われた武漢海鮮市場を閉鎖しても、2019年年末に41人だった感染者は、1月9日には57人に増加しました。1月10日頃には医療関係者なら、人から人への感染を疑っていたものと想像されます。

 かなり後の報道(2020/05/15 – Bloomberg, China Gives Fresh Details of Virus Response )ですが、下記の興味深い記載があります。 "  "引用部分

 "中国国家保健委員会副大臣Zeng Yixinは、2020年5月15日記者会見で、中国当局は以前に人から人への感染の兆候があることを知っていたが、新型ウイルスの伝染性のレベルを確認することは困難であったと述べた。HIVのような感染症であるが、人から人へと伝染しにくい病気がある、と彼は言った。
 中国の科学者が、ウイルスが人との間で簡単に広がると結論付けたのは1月19日であり、その情報は翌日に世界に公表されたと述べた。"

 Zengが述べた上記は、感染拡大の可能性について、習近平主席がウイルスの危険性について国民に警告する6日前に、中国当局が内部で話し合っていることを示す機密文書を引用したAP通信の4月の報告に反論したものです。

 AP通信の報告のように、人から人への感染の報告が遅れたのなら、その遅延により、数百万の人々が武漢から国内および世界各地に旅行し、パンデミックを引き起こしたことになります。

 "Zengは、中国は1月9日に病原体を新型コロナウイルスと結論し、翌日にはテスト・キットの開発を始めたと語った。1月12日、そのことをWHOに報告した。
 1月14日、地方保健当局の全国会議が開催された。「多くの不確実性が残っている。人から人への感染について、更に多くの研究が必要であると理解しており、ウイルスがさらに蔓延する可能性を排除することはできない。しかし、多くの疑問に対して結論を出すことはできなかった。」とZengは述べた。"

 上記の報道に従うなら、1月14には保健関係者は、新型肺炎が人から人に感染しないことに疑念を持っていたが、明確な証拠がなかったために公表されなかった、ということになります。

 その他に2月27日、鍾南山医師が記者会見で、早期の段階で人から人への感染や医療関係者の感染があつたが、中国CDC(CCDC)は上部に報告するだけで公表する権限はなかった、と述べたと報じられているようです。

 武漢市保健当局が、人から人への感染の警告に積極的でなかった理由として、武漢市は1月6~10日、湖北省は11~17日に重要政治行事である人民代表大会と政治協商会議が開催されことがあるのではないかと想像されます。これらの会議期間中は、安定が重要で問題ある情報の公開は制限されると言われます。

 またWHOも、2020/01/14 – STRAIT TIMESの報道によれば、新興疾病部門の責任者は1月14日のニュース解説で、「私たちが持っている情報からは、家族間での人から人への感染に限られている可能性がありますが、今のところ、人から人への持続的な感染がないことは非常に明確です」と述べています。
 しかし、WHOはより広範な発生の可能性に備えて準備を進めていると語っています。

 慎重な表現ですが、感染の強さはともかくとして、WHOも新型肺炎が人から人へと感染する可能性は認識していたのでしょう。


5. 早期に人から人への感染を警告していたら

新型肺炎が人から人へ感染する警告が遅れたと言っても、5日~10日程度のことです。しかし、これが無視できない問題になります。
 一つは感染症の特性に係わる問題です。例えば、イタリアでの感染では流行の初期に、1週間で感染者は3倍位に増加しています。感染症の対応では、一刻を争う事態が発生します。

 しかし、それ以上に問題なのは、この問題が、中国の春節の直前に起こったことです。
 中国の旧正月である春節は、旧暦のため1月の年もあれば2月の年もあります。2020年は1月25日が春節で、前日の1月24日から30日まで7連休になりました。春節の連休には、中国では数億人の大移動が起きると言われます。
 武漢封鎖が急遽実施されたのは、連休が始まる前日のことです。新型コロナウィルスが中国全土に広がることを、なんとしても防ぎたかったのです。

 しかし、1月26日のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(scmp)によれば、武漢市長は19日日曜の記者会見で、保健当局がウイルスの拡散能力が高まっていると警告したことで、致命的なコロナウイルスの流行と春節の祝祭のため、ロックダウン前に約500万の住民が武漢を去ったことを明らかにした。ロックダウン後、市内には約900万人が残っていた。武漢封鎖が発表された前日の夜に急いで逃げ出した人もいたが、多くの人は既に休暇で武漢を去っていた、と語りました。

 日本でも5月の連休に海外旅行に行くのなら、連休前に旅立つ人も多いものです。武漢を既に去った500万人のうち100万人くらいは、近距離の海外旅行ならタイや日本、遠距離の海外旅行なら欧米に旅立ったことでしょう。

 5日早くコロナウイルスによる人から人への感染を警告し、人の移動を制限したなら、武漢からの春節の旅行者の大半を思い留まらせ、海外とりわけ欧米の新型コロナの大流行を防げたかもしれないのです。


まとめ

 中国政府は認めないかもしれませんが、上述の情報からは、武漢封鎖直前に鍾南山医師が新型コロナの人から人への感染を認めるよりも前に、そのことが関係者に認識されていたことが窺われます。

 人から人へ感染しないという説明を続けた背景には、新型コロナの感染の強さに関する確証が無かったことがあるようです。
 また、間が悪いことに、武漢市などの人民代表大会や政治協商会議の時期と重なり、問題のある情報を公にしたくないということがあったように思われます。
 更に、春節直前の時期であったことが、世界的な大流行に繋がることになったのだと思います。

 WHOの専門家も1月10日頃には、恐らく、新型コロナが人から人へ感染するのではという疑念を持ったことと思います。
 それでも、中国からの報告をそのまま世界に発信し続けたのは、中国発の問題を大げさに伝えたくない、という中国に対する忖度が働いたのではないかと思われます。

 今回の中国の対応は、2003年のSARSのアウトブレイクの時のような明らかな情報の隠蔽ではないかもしれません。
 しかし、不確かだが重大な結果に繋がる問題に対しては、安全策をとるのが正しい対応です。それに対し中国は、中国発の問題を大げさに伝えたくなかったため、「人から人への感染の可能性は低い」という安全策でない情報を発信したように思われます。何れ、WHOを中心とする新型コロナの検証が行われれば、明らかになることでしょう。