データをもとに考える電源構成の再構築
原発の撤廃に関するデータ
トップシナリオ2050原発の撤廃に関するデータ
            
             原発の撤廃に関するデータ
(2014年夏調査 )

電力・エネルギー問題で、今、最も関心が高いのは原発の廃止でしょう。過半の人が、原発廃止を求めています。しかし、温暖化防止のためには、再生可能エネルギーへの転換が必要であり、電力の安定供給と経済負担の増大を抑制することは、なかなか難しい問題です。また、単に原発を撤廃するだけでも、それほど簡単ではありません。このページでは、下記レポートから抜粋して、原発の撤廃に関するデータを紹介します。


原発の設備寿命
 原発の設備寿命を調べてみました。図3-5には世界の原発を、横軸には系統接続から現在までの経過年数を、縦軸には発電容量の合計をとって示しました。系統接続後46年以上経過した原発は、全て永久停止になっています。

原発の設備寿命は、40年を目安に考えられているようです。放射線により炉心容器などの材料劣化があることが、火力発電設備などとの違いです。材料の欠陥検査などにより、使用期間を延長するか評価することが一般的であると思います。



日本の原発


























 日本には、系統に接続されて発電を行った原発は、ふげん、もんじゅを含め60基あります。その他に、2基が建設中です。60基のうち、11基は永久停止、もんじゅ1基が長期停止の扱いです。永久停止のなかには、福島第一原発の原子力1号~6号が含まれており、それらは1970年代に系統に接続されたものです。表3-1には、ふげん、もんじゅを除いて、系統に接続された原発の一覧表を示しました。

原子炉タイプは、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、中国電力が沸騰水型(BWR)を採用しており、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力は加圧水型(PWR)を採用しています。

 3-6には、日本の原発が系統に接続された年と、その発電容量の合計を示しました。同図でも、ふげん、もんじゅは除いています。1970年代に最初に多数導入された原発は、寿命を検討する段階に近づいていることが分かります。

その後も、1980年代から1990年代半ばまで、原発の導入が進んでいます。



運転可能な原発の残存簿価
 原発の廃止措置に関しては、以下の資料に全体像が整理されており参考にしました。

総合資源エネルギー調査会、電気料金審査専門委員会、廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ、第一回配布資料、資料5「原子力発電所の廃止措置を巡る会計制度の課題と論点」、平成259月、資源エネルギー庁

電力各社の平成25年度の有価証券報告書で、運転可能な原子力発電設備の残存簿価を調べてみました。10社合計で24,130億円です。かなりの金額ですが、原発が停止し、余分に掛かっている燃料代に比べれば、驚くほどでもないような気もします。

原発の廃止措置段階に入ると、残存簿価は一括費用計上されます。予定より早期に原発を廃止する場合には、大きい簿価が残ります。一方、福島第一原発のような事故でなくても、後述のように、原発の廃炉には長期間を要します。そのため20139月に、運転終了後も電気事業の用に供される設備については、減価償却費を継続し、料金原価に含めことができるよう変更されました。

本件の会計処理については、後述の原発解体引当金制度と併せ、正確に知りたい場合は、資源エネルギー庁の資料を確認下さい。


原発に装荷されている燃料

電力各社のウェブページで、運転可能な原発の原子炉に取り付けられている燃料集合体の数量を調べてみました。燃料集合体は、数10から20010本の燃料棒を束にしたもので、寸法も重量も種々異なりますが、日本全体の燃料集合体の数量を単純に合計すると23,800体数になります。


使用済み燃料集合体

同様に、使用済み燃料集合体の数量を調べました。電力各社のウェブページに掲載されている保管数量の集計年は同一ではありませんが、20147月時点で掲載されている最新データによれば、使用済み燃料集合体の合計数量は61,000体数です。

その他に、各原発から運ばれて、日本原燃の六ヶ所再処理工場に保管されている使用済み使用済み燃料集合体の総量が、重量で2,919tUpr(20123)と報告されています。
   注)
tUprは照射前金属ウラン重量換算トン


低レベル放射性廃棄物

低レベル放射性廃棄物の保管量も調べてみました。低レベル放射廃棄物は、3レベルに分類されています。①放射能レベルが極めて低い廃棄物で、濃度上限値は、例えばセシウムCs137単独なら100 kBq/kgで、浅地中処分(素掘りのレンチ処分)されるもの。②放射能レベルの比較的低い廃棄物で、濃度上限値はCs137単独なら100 GBq/kgで、浅地中処分(コンクリート製のピット処分)されるもの。③放射能レベルの比較的高い廃棄物とされ、濃度上限値はセシウム以外の放射線核種の値が示されているため省略しますが、余裕深度処分(地下50100mにコンクリートピットと同等の構造物を設けて処分)されるものです。

なお、最終処分場の立地が決まらないのは高レベル放射性廃棄物で、ガラス固化体とし、地下300m以深の安定した地層中に処分する予定とされています。

低レベル放射性廃棄物は、一般に200Lドラム缶に入れて保管されており、電力各社のウェブページに情報公開されている低レベル放射性廃棄物の合計は、659,000です。その他に、日本原燃の六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物埋設センターに266,000が埋設されています。


原発の廃止措置

福島第一原発のような事故によるものでない場合にも、原発の運転停止から廃止措置の完了までには2030程度を要するとされます。
運転終了後、使用済み核燃料の搬出、系統の除染を行った後、必要に応じた期間、放射能の減衰を待ちます。その上で、配管や容器の解体撤去を行い、その後、建屋を解体をします。廃棄物は、放射能レベルに応じて区分され、処理・処分されます。

廃炉の費用
 原発の廃止措置の費用は、表3-2のように想定されています。なお、反原発を主張している方などからは、もっと多くの費用が掛かるという意見もあるようです。
 表3-2の平均的な費用をもとにして、容量の合計で5,045kWの日本全体の原発を廃炉にする費用を概算すると、
33,000億円なります。







廃炉引当金の不足

原発の廃止措置には長期間を要し、多額の費用が掛かるため、原発運転中に、解体引当金を積み立てることが義務付けられています。廃止措置に要する総見積額をもとに、運転期間40年間と76%の設備利用率に基づく想定総発電電力量と、発電実績の比率に応じて積み立てることになっていました。

前述の資料「原子力発電所の廃止措置を巡る会計制度の課題と論点」によれば、平成24年度末の時点で、日本の運転可能な全原発の未引当額(廃炉の費用と解体引当金累計の差額)の合計は、12,425億円と示されています。

解体引当金の未引当額があるのは、殆どの原発の運転期間が40年未満であるためですが、その他に、設備利用率の実績が76%よりも低いことも加わっているようです。なお、内容は省略しますが、解体引当金制度の見直しも行われました。


発生する放射性廃棄物

廃止措置で発生する廃棄物の量については、図3-7に示すモデルプラント(110kWBWR)に対する試算があります。

 
 廃棄物の総量は約54万トンと試算されています。そのうち、約92(50万トン)は放射性廃棄物ではない廃棄物で、約5(3万トン)は放射線廃棄物として扱う必要がない廃棄物(クリアランス)です。

低レベル放射性廃棄物の発生量は、約2%(1万トン)程度と想定されています。前述の3段階の放射能レベルに分けると、放射能レベルが極めて低い廃棄物が約1万トン、比較的低い廃棄物が約0.09万トン、比較的高い廃棄物が約0.01万トンとなります。

BWRPWRの違いを考慮せず、また、廃棄物の発生量が原発の容量kWに比例するという大雑把な評価をすると、日本全体の原発を廃炉にした場合に発生する低レベル放射性廃棄物の総量は、およそ45万トンになります。


おわりに

以上紹介した数値データを表3-3に示しました。原発をやめる場合、CO2排出が少ない代替電源の導入は非常に大きな問題ですが、原発を廃止するだけでも、なかなか大変であることが分かると思います。

原発を直ちにやめれば、福島第一原発のような事故のリスクは無くなるでしょう。しかし、トイレの無いマンションと言われるような放射性廃棄物の問題が解決するわけではありません。日本には、既に沢山の放射性物質と放射性廃棄物があります。更に、廃炉の過程でも放射性廃棄物が発生します。直ちに原発をやめても、放射性廃棄物の問題は、さほど軽減されるわけではありませ。

 廃止を決めた原発は、地元にとって明らかに迷惑施設です。迷惑施設は、受益者が迷惑も分担することが原則です。原発の地元に全てを押し付けることは、公正なやり方ではないと思います。原発が立地していない多くの自治体で、脱原発を主張する首長が増加していますが、迷惑事項を分担することも必要になるでしょう。

 原発をやめることには、経済的負担とともに、お金では解決できない放射性廃棄物の問題が伴います。その他、2030年を掛けて、多数の原発を解体撤去するのには、長期に亘りその技術とそれを担う人材を維持することも必要になります。事前に、脱原発のシナリオを詰めておくことが重要だと思います。