コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック

20代の感染急増、コロナと経済の両立
(2020年8月13日)

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新型コロナ、なぜ人から人への感染の警告が遅れたか

新刊PDF:新型コロナの発生と日本の対応


1.東京の新型コロナウイルス陽性者
(1) 20代の感染急増

 東京都が公表している新型コロナウイルス陽性者は、2020年1月24日以降8月11日までの総数は16,240余です。図-1には、2月13日以降の毎日のコロナ陽性者数の推移を示しました。



 東京都が公表しているコロナウイルス陽性者の個人情報は、公表期日、性別、年代の3情報のみです。約10名は年代不明であり、それを除き、図-2に、東京都の年代別毎日のコロナ陽性者数の推移を示しました。



 上図は見ずらいため、図-3と図-4に、陽性者の多い20代、30代、40代、50代の人数を、3月20日から5月20日までと、それ以降に分けて示しました。両図の比較のため、陽性者数20人の目盛り幅をほぼ等しくしています。
 なお、緊急事態宣言が出されたのは4月7日、首都圏の緊急事態宣言が解除されたのは5月25日のことです。





 図-5と図-6には、60代、70代、80代、90代のコロナ陽性者数の推移を示しました。





 図-7には、東京都の1週間ごとの年代別コロナ陽性者数の推移を示しました。何れのグラフも、東京都が公表している同じ感染者一覧表のデータで作成したものです。



(2) 明瞭な傾向
 上記のグラフからは、下記傾向が明瞭に読み取れます。

①4月頃に、20代から50代で、陽性者数に顕著な差はない。
②4月頃に比べ7月以降は、20代~50代では陽性者が顕著に増加している。
③7月以降では、20代、30代の陽性者数は、40代、50代に比べて顕著に増加。
④4月頃と比べ7月以降で、40代、50代の陽性者数の増加はそれほど大きくない。
⑤4月頃の60代~80代の陽性者数は、20代~50代に比べて少ない。
⑥4月頃に比べ7月以降で、60代~80代の陽性者数は、ほとんど増加していない。
⑦4月頃に、10代以下の陽性者数は90代と同程度と少ない。
⑧7月以降、10代以下の陽性者数は増加しているが60代と同程度。


(3) なぜ20代、30代の陽性者が急増したか
 
4月頃に比べて7月以降、東京都の20代、30代のコロナ陽性者が急増したかには、幾つかの理由が考えられます。
 先ず、4月頃の陽性者は、コロナの明確な症状がある人のPCR検査結果が主でした。それに、その濃厚接触者のPCR検査で分かった軽症や無症状者が加わったものです。従って、4月頃にも軽症や無症状の多くの感染者がいたのかもしれません。当時のPCR検査の陽性者の5倍位の感染者がいるのではないかという意見を、多くの専門家が指摘していました。

 しかし、40代以上のコロナ陽性者がそれほど増加していないことの説明が必要です。7月以降の20、30代陽性者の増加に対し、小池都知事は、新宿歌舞伎町のホストクラブなどの「夜の街」の協力により、若い従業員に対する多数のPCR検査が実施されているためで、心配することではないと繰り返しました。その影響がかなり含まれているものと想像されます。

 更に、若年層はコロナに感染しても、基礎疾患がなければ重篤化することはない、という情報が、知れ渡ったことも影響していると思います。4月頃には、年齢とコロナ感染の重篤化の関係は、それほど認識されていなかったように思います。若い人も、高齢者にコロナを感染させてはいけないという意識を持ち、行動を自粛しているように思いますが、たまの飲み会などで集団感染が報じられるのは、自らに対するリスクはインフルエンザ程度である認識があるためと思います。

(4) コロナのリスクはインフルエンザと同程度か
 インターネットの書き込みを見ると、2割くらいの人がコロナのリスクはインフルエンザと同程度と考えているのではないかと思わされます。20代、30代の人にとって、コロナに感染しても軽症か無症状の人が大半のようですから、そのように考えるのももっともと思われます。

 インフルエンザは日本で、1シーズンに千数百万人が罹患すると言われます。同じように、1千万人がコロナに感染する場合を考えてみましょう。そのうち約8百万人は軽症か無症状で済むことでしょう。残りの2百万人のうち4分の1くらいが重篤化し、人工呼吸器やECMOによる治療を必要とする状態になるかもしれません。

 4月半ばに医療崩壊の可能性が言われたコロナ感染のピーク時では、厚生労働省の報告によると重症者は約330名でした。人口呼吸器などの設備はあっても、治療には多数の医療関係者が必要となるため、その程度の重症者しか対応できないということと思います。医療関係者が余程無理をしても、コロナ重症者の治療は千人くらいが限度と思われます。

 従って、インフルエンザ並みに特段の自粛をすることなく放置したならば、コロナ重症者の殆どは、人工呼吸器やECMOによる治療を受けることができず、亡くなることになるでしょう。

 西浦教授が示した「何も対策をしなければ国内で40万人が死亡する」という試算は、上記のことを感染症の数理モデルで示したものと思います。
 コロナはインフルエンザと同程度で怖くないと主張する人達は、自分がコロナで死亡する年代ではないとい認識が背景にあるのではないかと想像されます。

(5) 歌舞伎町の無症状感染者
 歌舞伎町のホストクラブなどの若い従業員に、無症状のコロナ陽性者が多数いることは、小池都知事の会見で報じられ、PCR検査の結果からも裏付けられています。無症状の陽性者でも、それなりに感染力があるため大変厄介な問題です。

 全国一律の自粛要請は、経済的影響が極めて大きいため、コロナ感染が集中する地域や業種に絞った対策を実施すべきことが、多くの有識者により指摘されています。

 歌舞伎町がある新宿区も、かなり頑張って対策を講じているようです。探すと新宿区が公表している情報として、下表に整理したものがありました。



 7月前半の「夜間の接客業を含む飲食業」の従業員のPCR検査実績では、驚くべきことに、PCR検査の陽性率は50%近くに達しています。

 歌舞伎町には数千軒のスナックや風俗店があると言われます。歌舞伎町の「夜の街」に、どのような事業者や従業員がどの位いて、どれだけのPCR検査を実施したのか、正確でなくても概要情報を提供してもらいたいものです。
 保健所などは忙しくて、そのような情報整理をしている暇はないと思います。しかし、シンクタンクに外注すれば、500万円くらいの調査費で報告書を作ってくれることです。

 その種の情報が提供されないと、しばらく感染者が出なかった地方を含め、全国に急速に拡大した感染は、歌舞伎町由来ではないかと考えたくなります。

(6) なぜ高齢の陽性者は増加しないか
 7月以降にも、60代以上の高齢の陽性者が増加しないのは、緊急事態宣言が解除されても、高齢者は自粛を続けているためと思います。

 例えば私は70代半ばで昼は外食が多かったのですが、緊急事態宣言が解除されても外食を止めています。死亡リスクでは、がんや脳梗塞などの方が遥かに高いことは理解していますが、それは運命のようなものです。一方、コロナ感染は自らの意思による自粛で防ぐことができます。

 7月以降の高齢者のコロナ感染は、子供や孫からの感染の他は、高齢者施設や医療施設での集団感染のように、本人の意思で防げないものが多いと思われます。
 その他、昼カラのように殆どが常連客で感染リスクは低いと考えていたものに、何らかの原因で感染者が入りこんだ場合であると思われます。

(7) 若年者の感染増加と高齢者の感染防止
 20代、30代にとってインフルエンザと同等程度のリスクであるコロナに対し、厳しい自粛を求めるのは無理だと思います。そのため、若い無症状の感染者から、感染によるリスクが高い高齢者が感染することを防ぐ対策が重要になります。この問題に対しては、種々知恵を出す余地があると思います。

 例えば電車に関し、60代以上を対象とした高齢者専用車両(女性専用車両のように)を設ければ、感染リスクをゼロにすることはできないけれど、感染を減らす効果があると思います。
 また私の経験で、昼食時に高齢者が多いレストランはかなりあります。かつての喫煙席のように高齢者席を設ければ、感染リスクの低減とともに、外食を自粛している高齢の客を呼び戻すことに役立つでしょう。

 感染防止ではありませんが、感染リスクは低くても感染の可能性がある仕事を、20代の独身者に分担してもらうことも考えられます。危険な仕事を若い人に押し付けようという意味ではありません。万一感染しても軽症で済む人に担当してもらうことは、合理的であると考えます。
 充分な感染防止対策をした上で、感染リスクの程度に応じて定期的にPCR検査を行うとともに、万一感染した場合には、労災による有給休暇など充分な補償を用意することは言うまでもありません。



2.感染抑制と経済の両立

(1) 感染の全国拡大
 7月5日の都知事選を控え小池都知事は、東京都で20-30代のコロナ陽性者が増加しているのは、新宿歌舞伎町の夜の街の事業者の協力により、PCR検査件数が増加しているためと繰り返しました。しかし、その後東京都のコロナ感染者は急増しました。

 7月22日開始予定のGO TOトラベルキャンペーンを前に、7月11日菅官房長官は、コロナ感染拡大は東京都の問題と発言し、16日には同キャンペーンからの東京を除外が決定されました。しかし、感染拡大は全国に拡がってゆきます。

 しばらく感染者がほとんど出なかった大阪で、6月半ばから感染の増加が始まりました。感染者が減少していた福岡県も、6月末には感染の増加に転じました。東京同様に感染者が無くならず苦労していた北海道も、7月に入り一旦感染者が減少していたのですが、再び増加に転じます。2ヶ月ほど感染者が殆ど出なかった愛知や沖縄も、7月半以降、感染の急増が始まりました。

 神奈川、埼玉、千葉は東京の感染拡大に牽引され、兵庫、京都は大阪の感染拡大に牽引されて増加しています。これらの感染拡大は、東京圏、大阪圏として評価すべきでしょう。

 その他のほとんどの県は、感染者数はそれほど多くありませんが、感染は全国に拡がり、一部にはクラスターの発生も見られました。
 東京圏を除いても、7月の上旬から全国的な感染増加が顕著になり始めました。

(2) 感染多発地域の特徴
 多くの感染者が発生している都道府県として、北から北海道、東京、愛知、大阪、福岡、沖縄があげられます。これらは、東京の歌舞伎町、北海道のすすきの、福岡の中州のように大きな歓楽街を含んでいることが特徴です。

 既に指摘されているように、これら「夜の街」が、感染拡大の駆動源になっていると考えられます。
 夜の街での感染者が、飲み会などで感染者を広げ、更にその家庭にコロナウイルスが持ち込こまれるのが典型的な感染拡大の流れです。

(3) コロナと経済の両立
 7月末には1日の全国の感染者数が1,500名を超え、以後、度々起きるようになりました。感染多発都道府県の知事は堪りかねて、政府に再度の自粛要請の発令を要望するとともに、夫々の地域の状況に応じて自粛要請を出し始めました。

 しかし、政府は経済的に深刻な悪影響を与える再度の緊急事態宣言を出すことには慎重な立場をとり続けています。
 医療提供体制には少し余裕があること、重症者数も以前のピーク時に比べれば少ないこと、感染者が多くても30代以下の軽症者や無症状者が多く占めていることなどが理由です。


(4) 主要先進国との比較
 官僚は前例が無い問題の扱いは得意ではありません。未経験のコロナ問題に対し、政府は高い危惧を持って、再度の自粛要請を出さない方針を取っているものと想像されます。その判断には、欧米の主要先進国の対応との比較があるのだと想像します。

 幸いにして、日本の緊急事態宣言やその解除は、下表に示すように、主要諸国より少し遅れて実施されました。経済活動を活発にするためにコロナ対応の自粛を止めると、どの程度感染が増加するかは、10日ほどすれば結果が出ることです。
 なお、海外先進国の事例を参考にできるのに、早期に大阪方式を発表して自粛緩和に踏み切った大阪府知事の対応を私は評価できません。



 下図に、自粛が緩和された7月以降について、日本と米国、英国、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスのコロナ感染者数と死者数の比較を示しました。
 図-8は、Googleの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のデータで、7月1日以降の毎日報告されている感染者数の推移、図-9は毎日の死亡者数の推移です。

図-8 7月以降毎日のコロナ感染者数の推移
出所:Googleの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウェブ・データ


図-9 7月以降毎日のコロナ死亡者数の推移
出所:Googleの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウェブ・データ


 また、図-10、図-11は札幌医科大学がウェブに公開している新型コロナウイルス感染に関するデータで、前者は過去7日間の人口100万人当りの感染者数、後者は同じく7日間の人口100万人当りの死亡者数を日本と米国、英国、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスで比較したものです。

 PCR検査の結果の報告などは、1週間周期の変動があるため、7日間の合計値で示したものです。また、人口が違う各国を比較をするには、100万人当りの値で比較することが合理的です。

 なお、8月以後の日本のように、コロナ感染者が急増している場合には、7日間の合計値では、実態を正しく表せない場合もあるため、図-8、図-9も示しました。

図-10 主要先進国の7月以降コロナ感染者数(過去7日間の増加)比較
  出所:札幌医科大学新型コロナウイルス感染データのウェブページ


図-11 主要先進国の7月以降コロナ死亡者数(過去7日間の増加)比較
  出所:札幌医科大学新型コロナウイルス感染データのウェブページ


 図-10で人口100万人当りの感染者数は、米国が飛びぬけて多く、最近感染者が急増しているスペインが続いています。

 日本は、フランス、英国、ドイツの感染者数と概ね同水準です。注意すべきは、他の国々が自粛を緩和しても、感染者の増加は緩やかであるのに対し、日本の感染者増加が大きい点です。

 図-11で人口100万人当りの死亡者数では、日本は最近増加していますが、それでも他の先進国に比べてかなり少ない水準です。

 他の先進国に比べて感染者と死亡者が多くないことが、自粛要請を出す状況にないという日本政府の判断の一つになっているものと推測されます。

(5) 感染者増加の要因
 ドイツや英国などに比べ、感染者の増加が大きいことは心配です。マスクの着用や、3密を避ける点で、それらの国々より日本の対応が不充分であるようには思われません。
 もしかしたら、感染拡大の駆動源である日本の風俗産業の特質が、高い感染増加に繋がってるなのでないかという想いがします。

(6) 感染増加の抑制対策
 
症状のある感染者を入院させ、軽症、無症状者対策として2-3週間のステイ・ホームを真面目に実施すれば、社会からコロナ感染者をほとんど無くすことができます。しかし、それは、経済的ダメージが大き過ぎるというのが現在の主導的考えです。

 上記のグラフに示したように、日本のコロナ感染者数はそれほど多くないので、感染者の増加を抑制できればよいのだと思います。コロナ感染の実効再生産数を1以下に引き下げればよいわけです。

 
個々の対策は充分でなくても、複数の具体的アクションを伴う対策を講じることで感染増加を抑えるべきです。前述の電車に高齢者専用車両を設けるのも、その種の対策案の一つです。

 最も大きい効果が期待されるのは、歓楽街の感染対策だと思います。但し、補償をした上で営業自粛要請するのは、感染を広めていない事業者にも、自粛を要請することになります。また、自然災害での公的支援とのバランスを考慮すれば、コロナだけに充分な補償金を支給するわけにはいかないと思います。

 上記歌舞伎町のPCR検査の実績で紹介したように、陽性率が50%近い地域や業種に対しては、対象地域・業種の従業員全員のPCR検査を求めることは適切な対応と思います。歌舞伎町なら数万人のPCR検査が必要になると思われますが、実行可能でしょう。

 PCR検査陽性の従業員がいなかった事業者は営業を続けてもらい、一人でも陽性者がでた事業者は、2~3週間の営業停止を求めてはどうでしょう。従業員に感染者が出ないよう、緊張感をもって営業してもらえるようになると考えます。
 その地域の感染者がほとんど無くなるまで、1か月くらいの間隔でPCR検査を続けることが必要と考えます。