データをもとに考える電源構成の再構築

欧州と日本の風力発電、陸上の立地・洋上のコスト

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レポート「データをもとに考える日本の電源構成の再構築」

      
欧州と日本の風力発電、陸上の立地・洋上のコスト(前編) (2013年11月4日)

  海外では、太陽光発電に比べ風力発電の導入が進んでいます。陸上風力発電の発電コストが、太陽光に比べて大幅に安いためです。日本で風力発電の導入が拡大しないのは、適した陸上の立地が乏しいためです。洋上なら、風況の良い場所がありますが、発電コストが高くなります。

風力と太陽光の発電コスト
  
このページは、陸上風力発電の発電コストが、太陽光発電より大幅に安い事実をもとにしています。図-1には、発電コストの代わりに、再生可能エネルギー買取制度(FIT)の買取価格を示しました。ウェブページに現在掲載されているデータですが、2010年4月現在の買取価格で、その後、特に太陽光発電は価格は低下しており、最新の値はもっと下がっていると認識して下さい。
  EUでは、多くの国でFITが導入されています。電力買取価格は、発電コストよりも少し高く設定されます。その差が、再エネ発電導入のインセンティブになります。インセンティブの大きさは、国により異なるようです。図-1に示されるように、陸上風力発電の買取価格は、概して太陽光発電の1/3くらいです。両者の発電コストの比率も、そのくらいだと思います。




  
日本の発電コストに関する最近の情報として、「コスト等検証委員会報告書」(2011年12月)があります。表-1に、同報告書に記載されている値と、日本のFITの調達価格を示しました。
  コスト等検証委員会報告書には、現状2010年と2030年のモデルプラントの発電コストが示されており、そのうち、陸上風力発電と太陽光発電の値を示しました。2030年の発電コストは、今後の技術革新などによるコスト低減を考慮した値です。風力発電より太陽光発電の方がコスト低減の余地が大きいことは間違いないと思いますが、2030年の値は期待値と言うべきでしょう。
  表-1からは、太陽光発電と比較して風力発電の電力価格が、かなり安いことが分かると思います。




  
日本とEUのFITの風力発電の買取価格を比較すると、EUが約0.1ユーロ/kWh (為替レート130円/ユーロで換算すると13円/kWh) に対し、日本は23.1円/kWh (税抜き22円/kWh) であり、日本は買取価格が随分高いことが分かります。これは、日本は太陽光発電の導入量が少なく設備価格の低下が進んでいないこともあると思いますが、後述するように、年間平均で高い風速が得られる立地が少なく、発電コストが高くなっているためと思います。


世界の風力発電概況
  
図-2には、国際エネルギー機関(IEA)の風力発電の年次報告書から、2012年末の各国の風力発電データを示しました。各国の累積の設置発電容量、総電力需要に対する風力発電の比率、および、平均の設備利用率を示しました。3つのグラフとも、発電容量の大きい国から順に並べてあります。

  IEA風力発電のメンバー国のデータのため、設置容量が大きいインド(18.4GW)やフランス(7.5GW)などは含まれていません。設備利用率( =年間発電電力量/(定格発電出力×365×24) )のうち、ドイツとイタリアは2011年報告書のものです。



  風力発電の設置容量が大きいのは中国と米国です。大国で電力需要も大きく、総電力需要に対する風力発電の比率は、各々2%、3.5%とそれほど大きくありません。一方、風力発電の比率が30%と高いデンマークの設置容量は、第3位のドイツと比べても約1/8と小さく、デンマークの事例は、そのまま日本の参考にはならないと思います。設置容量と風力発電比率が共に大きいのは、ドイツやスペインです。風力発電に関する、これらの国の成功と失敗の事例を見極めた上で参考にすべきです。

  風力発電の定格出力と設備価格が同じなら、設備利用率が2倍になれば、発電コストは二分の一になります。設備利用率は重要なファクターです。
  米国、カナダ、オーストラリア、ノルウェーは30%を超える高い設備利用率です。風況の良い場所が豊富で、良い立地を選んで利用した結果であると思います。風力発電の導入が進んでいる国の多くは、設備利用率が25%前後かそれ以上です。
  一方、日本の平均の設備利用率は20%です。また、ドイツは19%、イタリアは18%とあまり高くありません。以下、風力発電の風況マップにより、主要国の状況を見ていきましょう。


風況マップ
  Googleの画像検索で、キーワードを "wind energy resource maps" などとすると、風力発電を対象とした多数の風況マップを見ることができます。図-3はその一例です。


 
 図-3に、世界の風況マップを示しました。3TIER社のウェブページから無償でダウンロードできるもので、地上80mの風況です。



  
風力発電の風況マップを見る際は、どのくらいの高さのデータであるかを確認する必要があります。図-5には、風力発電の大型化の進展を示しました。


欧州の風況
  
図-4からも、欧州大陸で風速が高い地域が分かるかもしれませんが、一例として、もっと分かり易い欧州の風況マップを下記のリンクで示しました。European Wind Atlas という600頁余りの有償の風況データ資料の紹介ページに掲載されているものです。局所的な変化を除き、大規模スケールの風速状況を示したものです。

  欧州の風況マップ(地上50m)
   European wind resources at 50 metres a.g.l.

   From the European Wind Atlas. Copyright © 1989 by Risø National Laboratory,
   Roskilde,Denmark


  同マップをコピーをして、このページに貼付することは問題があるかもしれないと思い、リンクを貼って示しました。グラフを見た後は、グラフ上部の戻りの矢印をクリックし、このページに戻って下さい。

  欧州大陸の北西の海岸地域は、風況が優れており、高い設備利用率が期待できることが分かります。偏西風の影響を受けているためと思います。海に囲まれた英国やアイルランドは、国全体が良い風況に恵まれています。特に、英国北部のスコットランド地方は高い風速です。また、デンマークも、国全体が風力発電に適していることが分かります。
  イベリア半島のスペインやポルトガルの海岸地域にも、風力発電に適した地域が見られます。一方、地中海に突き出たイタリアは、概して風況が良くありません。



米国・その他の風況
  
下記リンクで示す米国の風況マップでは、ロッキー山脈東側の米国中央部を縦断する広大な地帯が、風力発電に適した地域であることが分かります。図-2に示したように、米国の風力発電設置量は、既に世界第2位の多さですが、まだまだ風力発電に適した立地があることが分かります。

  米国の風況マップ(地上80m)
   Utility-Scale Land-Based 80-meter Wind Maps
   米国立再生可能エネルギー研究所 (NREL)

  
風況マップの引用は省略しますが、中国では、主に北部の内モンゴル自治区が風況が優れた地域です。また、オーストラリアでは、南部の海岸線につながる地域の風況が優れています。両国とも広い国土を有しており、風力発電に関し高いポテンシャルがあると思われます。
  次に、日本の参考にするため、ドイツとイタリアを見ることにしましょう。



ドイツの風力発電
  
上記の「欧州の風況マップ」からは、北海やバルト海に面しているドイツ北部は風力発電に適していることが分かります。図-6には、ドイツ各州の風力発電の設置状況を示しました。なお、各州の総電力消費量を併記しようと探したのですが見つからなかったため、経済規模を示す各州のGDPを表記しました。

  図-6からは、風況がそれほど良くない内陸部にも、風力発電がかなり設置されていることが分かります。そのため、ドイツの平均の設備利用率は、上記のように19%とあまり高くありません。
  しかし、経済規模が大きく電力消費が高いバイエルンなどの南部の州は、風力発電の設置が少ないのが現状です。風力発電量が増大する冬季などには、ドイツ北部で余剰の電力を南部へ送電することが必要になりますが、現状の送電網の容量が充分でないことが報じられています。
  日本でも、風力発電の導入が拡大すれば、同様の問題が生じると思います。北海道東部が風力資源が豊富な地域ですが、最大電力消費地の東京とは遠く離れています。




  
別のウエブ・ページ「ドイツの事例をもとに考える日本の太陽光発電」で、2050年までに、温室効果ガスを80%削減するドイツの長期シナリオを紹介しました。そこでは、2050年の風力発電の容量は、2012年の2.6倍にするシナリオとなっています。その場合、風況が良くない内陸部にも風力発電が増加し、設備利用率を低下させることになります。

  一方、現状0.9%に過ぎないドイツの洋上風力発電は、今後、大幅に増加させることが必要になるでしょう。洋上風力発電では、30数%の設備利用率が期待できるものと思われます。北海沿岸には遠浅の海があり、洋上風力発電の建設費増加も、ある程度抑えられようです。それでも、陸上風力に比べて、洋上風力の設備費は大幅に増加します。また、発電電力量の変動対策に加え、ドイツ南部への送電網の強化も必要になります。

  再生可能エネルギーの買取制度により、発電容量の総量が増大すれば済む訳ではなく、全国的な計画のもとに、再生可能エネルギーの導入拡大を図ることが不可欠であることを示唆しています。



イタリアの電源構成と日本
  
イタリアを取り上げたのは、原発を廃止したことと、日本と同様にエネルギー自給率が低いためです。2008年実績で、イタリアのエネルギー自給率は15%です。エネルギー消費量に対する生産量比率は、石油が7%前後、天然ガスは10%前後、石炭は殆どゼロです。なお、原子力を除く日本のエネルギー自給率は4%に過ぎませんから、イタリアの状況は日本よりはましと言えるでしょう。

  先ず、イタリアの電源構成から見ていきましょう。図-7に、1980年以降のイタリアの電源構成の推移を示しました。1987年以前の範囲に、濃い黄色で示されているのが原子力です。イタリアはチェルノブイリ事故後の1987年に国民投票で原発廃止を決め、1990年までに全原発を閉鎖しました。以来、原発による発電は行われていません。なお、スウェーデンも1980年に国民投票で原発の全廃を決めましたが、その後、原発による発電量は増加し、2011年実績で総電力量の38% (ウェブ・ページ「統計データで見る世界各国の電源構成」参照)を占めています。

  イタリアの総発電電力量に占める原発の比率は、最大でも5%以下だったので、廃止が容易だったのかも知れません。しかし、その後、電力消費量は1987年に比べて約1.6倍に増加しました。図-7からは、増加する電力需要を如何に賄うか、苦労の跡が窺われます。近年の原油価格の高騰により、石油火力は減少させざるを得ません。余り明瞭ではありませんが、石炭火力は1990年から少し減少した後、微増しています。
  結局、天然ガスに大幅に依存することになります。天然ガスの産出国は、石油に比べ偏在していませんが、備蓄量は少なく、電力の安定供給の面で好ましいことではありません。




  
最新の2012年のイタリアの電力の構成比率を図-8に示しました。比較するため、日本の東日本大震災前後の電力構成比率を図-9、図-10に示しました。

  蛇足になりますが、日本の最新の発電電力量の調べ方を紹介します。発電電力量には、発電端の値と、発電所内での使用電力を差し引いた送電端の値があります。また、消費電力量が知りたいなら、更に、送配電損失を減じることになります。
  資源エネルギー庁の統計の発電実績や、エネルギー白書の発電電力量は、電力10社の発電端の値に、10社が社外から受電した電力量を加えたものです。しかし、日本国内で発電されている電力は、それだけではありません。例えば、鉄鋼会社は大容量の自家発電を持っています。発電電力の一部を自社で消費し、昼間の高い電気を電力会社に販売し、夜間の安い電気を電力会社から購入することも行っています。
  自家発電力の自社消費量を含めた発電電力量のデータとしては、IEAのデータベース"Electricity and Heat"があります。燃料種類別の発電端の値、発電所内での使用電力、送配電損失も示されています。しかし、"Electricity and Heat"のデータは、1年遅れくらいで掲載されます。

  

 
最新の発電電力量が知りたい場合、同じくIEAの"Monthly Electricity Statistics"を調べることになります。但し、火力発電の内訳と、地熱/太陽光/風力/その他の内訳が示されていません。また、前月分のデータが、翌月に修正される場合もあります。1年間の合計値と"Electricity and Heat"の値に違いがあるようで、細かい数字に拘る場合には注意が必要です。
  図-9の日本の2009年の電力量比率は、IEAの"Electricity and Heat"の発電端の値と、総合資源エネルギー調査会総合部会の資料の2009年度の再エネのデータ、環境省の日本の廃棄物処理の廃棄物発電を併せものです。


  図-10の2012年度のデータは、IEAの"Monthly Electricity Statistics"を積算したものをベースに、火力発電の内訳は、電力10社の発受電実績比で石炭、石油、LNG火力を比例配分しました。再エネ等のデータは、図-8と同じ出典の2012年度の値です。
  統計データとして正確さを欠いたものですが、電源構成を比較する上では、あまり問題無いと思います。




  
イタリアの電源構成を日本の大震災前と比較すると、原発が無くガス火力の比率が高いことの他にも、相違点があります。水力発電の比率は日本よりかなり高く、地熱発電も少ないけれど日本より高い比率です。風力発電や太陽光発電の比率がかなり高いことが分かります。バイオ・廃棄物発電も日本より高い比率です。
  太陽光発電は、注目されているドイツの2012年の発電量比率が4.7%に対し、イタリアは5.7%と上回っています。イタリアは風力発電に適した立地が乏しいため、発電コストが高い太陽光発電の導入に力を入れているのだと思います。

  イタリアについて注目すべきは、電力輸入量の多さです。図-8は輸入と輸出の差を表示していますが、輸出量は輸入の5%に過ぎません。イタリアは、恒常的に電力不足に悩まされていると言われます。
  再生可能エネルギーの導入が進んでいる欧州の国々と同様に、電気料金も高くなっています。産業用電気料金は、国際的産業競争力を維持するため、多くの国で低く設定されています。しかし、イタリアは産業用電気料金の優遇策が殆ど講じられていなようで、産業用電気料金の高さが際立っていることを、ウェブ・ページ「統計データで見る世界各国の電源構成」で紹介しました。

  日本は大震災後に、殆どの原発が停止しましたが、厳しい電力不足には至っていません。しかし、図-10に示すように、LNG火力の発電電力量が増大し、石油火力が大幅に増加しています。近年の石油価格の高騰で、最早不適格なものとして10年前後休止していた石油火力を、急遽再稼動して凌いでいるわけです。
  脱原発を選択するにしても、如何にして少ない国民負担で再生可能エネルギーに移行するか、事前に考えておくことの重要性をイタリアの事例は示していると思います。



欧州の風力発電ポテンシャル
  
上記欧州の風力マップからは、英国や欧州大陸の北西海岸域は、風力エネルギーが豊富であり、一方、イタリアは、風力発電に適した立地が乏しいことが定性的に分かります。ここでは、定量的情報として、下記文献により、欧州の風力発電ポテンシャルを紹介します。

   EEA(欧州環境省) Technical report (2009年), "Europe's onshore and offshore wind energy potential, An assessment of environmental and economic cnstraints"

  少し以前のレポートですが、風力発電は太陽光発電のようにコスト低減が急速に進んでいる訳ではないので、状況はそれ程違わないと思います。
   同レポートは、2020年と2030年の欧州の風力発電のポテンシャルについて、各種制約抜きの最大値、社会・環境面の制約を考慮した値、従来発電のコストに比べて経済性の競争力がある値(Economically competitive potential、以下には経済性考慮ポテンシャル)の3種を示しています。ここでは、陸上風力発電の経済性考慮ポテンシャルを紹介します。

  2005年の風力発電の設備費を基に、2020年には設備費が25%、2030年には40%だけ低下すると想定しています。運転保守費の比率や金利などは、2005年の標準的な値を用いています。それらのデータと、年間平均風速を示す風況マップの定量データを併せれば、地図上に風力発電の発電コストを示す風力発電のコスト・マップを作成することができます。
  欧州の将来の平均発電コストを、2005年価格ベースで、2020年は6.3ユーロセント/kWh、2030年は6.5ユーロセント/kWhと想定し、それよりも発電コストが低い5.5ユーロセント/kWh以下の風力発電を経済性考慮ポテンシャルとして算定しています。


  
図-11に、欧州各国の2020年と2030年の陸上風力発電の経済性考慮ポテンシャルを示しました。2020年の合計値は9兆6,000億kWhになります。これらの国全体の2012年の電力供給量実績は3兆5,000億kWhですから、3倍近くの経済性考慮ポテンシャルがあることになります。
  ポテンシャルが一番大きい英国は約4兆kWhで、2012年実績の3,600億kWhの約10倍です。因みに、日本の年間発電電力量は1兆kWh前後です。

  上述したドイツの経済性考慮ポテンシャルは、2020年は2,600億kWh、2030年は2兆5,000億kWhで、2012年供給実績である5,600億kWhの各々0.5倍、4.5倍です。
  一方、イタリアの経済性考慮ポテンシャルは、2020年は1,100億kWh、2030年は3,300億kWhで、2012年供給実績である3,300億kWhの各々0.3倍、1.0倍です。
  風力発電の設備費低減が2030年の水準まで進むと、ドイツの経済性考慮ポテンシャルが大幅に増大するのに対し、イタリアのポテンシャルは、それ程増加していません。イタリアの風力発電の立地の乏しさを反映したものでしょう。


  
非常に大きなポテンシャルが想定されていますが、風力発電を推進している組織が検討したものですから、割り引いて考えることが必要でしょう。また、一般にポテンシャルなどというものは、いざ本当に使おうとすると、考慮されていなかった種々の制約のため、その何分の一しか使えないものです。

  しかし重要な点は、欧州では、燃料価格が上昇し、火力発電コストが高くなった時点では、風力発電の設備費がある程度低下すれば、従来型発電と経済的に競争できると考えられている点です。

  一方、日本での議論は、温暖化防止のためには、余分のお金が掛かっても再生可能エネルギー導入を拡大しようというものです。日本は安価な陸上風力発電の立地が乏しいため、再生可能エネルギーとして、発電コストが高い太陽光発電を中心に考えなければならないためです。



日本の風力発電
  
図-12に、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のウェブページから引用した日本の風況マップを示します。NEDOの風況マップのページには、陸上と洋上の風況が示されており、地上30m、50m、70mの3種を選択できます。また、選択した局所を拡大表示する機能など、種々の機能を含む手間を掛けて作成されたものです。
  図-12は地上50mの局所風況マップです。

  風力発電は経済性の点から、目安として年間平均風速が7m/s以上の立地が選択されると言われます。図-12で、オレンジ色の領域以上の場所が該当します。日本の場合、その多くは山岳部であることが分かります。
  
  風力発電のポテンシャルについては、前記の「コスト等検証委員会報告書」に記載があります。環境省や経済産業省が過去に委託して行った複数の調査結果を整理し、平均的共通的な値をまとめたもののようです。
  同報告書の日本の陸上風力発電のポテンシャルを表-2に示しました。同表に黄色のセルで示した設備容量が1億5000万kW、年間発電電力量で2700億kWhが有望なポテンシャルのようです。日本の総発電電力量の約27%に相当します。

  
ポテンシャル量の算定基準は、あまり明確ではないように感じますが、同委員会資料を見ると、再エネの買取制度で、調達価格20円/kWhで20年間買取るケースに相当する導入可能量のようです。また、風速5.5m/s未満の立地は除いた、という記述もあり、上述の欧州の風力発電ポテンシャルよりも、発電コストが高いものまで含めたポテンシャルのようです。

  表-2には、2010年に閣議決定したエネルギー基本計画で想定されている2030年の風力発電量を併記しました。それと比べて15倍であり、かなり背伸びをした値であると感じます。日本では、20~30年先に、火力発電と同等の発電コストで導入できる風力発電の量は限られるように思われます。



前編のおわりに
  
少し長くなったので、洋上風力は後編に記載することにします。

  欧州では、将来、化石燃料の価格が上昇し、風力発電の設備価格がある程度低下すれば、風力発電は火力発電と経済的に競争できる水準になると考えられていることを紹介しました。米国も膨大な風力資源を有しており、その気になれば、化石燃料から再生可能エネルギーに舵を切ることも可能でしょう。
  欧米が、先進国を対象に大幅なCO2の排出削減を提唱した場合、日本は火力発電と経済的に遜色が無い陸上風力発電の立地が乏しいため、脱原発のもとでは、高価な太陽光発電を限界まで導入するとともに、エネルギー多消費産業の海外移転を図ることくらいしか有効な手段はないと思います。大きな経済負担と雇用の喪失が伴います。

  リタイアした政治家の発言としては、「政治が脱原発を決めれば、代替策は知恵のある人が出してくれる」という程度かもしれません。しかし、それでは、積算根拠が無いままに温室効果ガスの25%削減を表明した鳩山元首相と同じです。重要な事項ですから、行政は原発と脱原発について、各種想定される事態の影響や対策案を示し、それをもとに何れを選択するか決めるべきです。